ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(ヴィム・ヴェンダース監督/1999)。

ギタリストの大萩康司氏をはじめ、いろんな人からすごいすごいと聞きつつも見逃していた。ライ・クーダーがプロデュースした同名のCDアルバムに出演した、キューバのミュージシャンたちのインタビューや演奏で構成した音楽系ロードムービー。いや、もうこれは映画というよりも音楽そのものといった方がいいな。

もともとライ・クーダーは、製作のニック・ゴールドとともに、西アフリカとキューバのミュージシャンによるコラボレートアルバムを作るつもりで、ハバナに乗り込んでいったらしい。これは実現すれば、たしかに面白すぎるアイデアだったのだが、アフリカ組が何かの都合で入国できなくなってしまう。

それではということで、とりあえずキューバのミュージシャンを集めた。今、活躍している(サルサ系の?)若手ミュージシャンではなくて、クーダー自身が70年代に憧れたキューバ音楽の、まさにその時に音を出していた連中を探しだしてきた。

多くは引退していて、忘れられた存在であり、伝説の巨人などという称号が似合う人もいれば、ただ忘れられたのもいる。当然、みんな高齢化していて、下が65歳、上は90歳という連中だ。そんなおじいちゃんたちが、「いいから、来い来い」という感じで、なんだなんだと集まってきた。

おお、お前、生きておったのかと、その場でセッションが始まる。それを見たライ・クーダーは、これはいけると録音を決心する。と、そういう流れで、あのグラミー賞アルバムは出来上がったらしい。

それにしても。である。この映画は、ほんとに「それにしても」が多い。まず、クーダーが録音したスタジオというのは、町のミニFM局よりも質素な普通の家みたいなところだった。そこで、まあ一応マルチチャンネルではあるんだろうけど、楽器、ボーカル、コーラスが全員勢揃いして、せえので一発録りで録っていく。こんな録音方法、高音質レーベル以外はもうどこもやってない。

当時、90歳になっていたコンパイ・セグンドの歌やギタープレイもすごかったけど、その台詞がよかった。「人生で大切なのは、花と女とロマンスだ。私は今も現役だ。5人の子供がいるが、今、6人目を作っているところだ。もう一人ほしいからな。がはは」。

ベースのオルランド”カチャイート”ロペス。「うちは曾祖父の頃からから代々、ベースだ。子供の頃、バイオリンを選択したが、祖父のいいつけでベースになった。仕方がない。要は慣れだ」。日本に、曾祖父の代からベースっているのか。

圧巻は、”キューバのナット・キング・コール”(ルックスは憂歌団の木村だけど)、イブライム・フェレール。そら、この人の声の甘さ、切なさというものにはひったまげるしかない。

まあ、とにかくこういう連中がどんどん出てきて、がんがんやる。最後はカーネギーホールのコンサートでエンディング。ライ・クーダーのプロデュース能力にも感心したけど、ステージではサイドミュージシャンに徹していたところもよかった。野心もあっただろうけど、それよりもキューバ音楽に対する好奇心と敬意の方が先に立っていたから、ああいう作品が生まれたんだろうと思う。

ところで、オクサンの友達の一人が、この春キューバに転勤になるらしい。遊びに来いといわれているらしいのだが、遊びに来いといったってなあ。そういえばコロンビアにも一人ツテがあったが、あのへんはちょっと行ってきますというわけには…。