映画>ウディ・アレンとルネ・クレール
怒濤のごとく今夜も2本立てである。これからちょっと中入りがあって、3本立てになるかもしれないけど。
『おいしい生活』(ウディ・アレン監督/2000)。
もはやこの人の映画は小津安二郎みたいなもので、どれを観ても同じといえば同じなんだけど(何しろ主人公がウディ・アレンその人なもので)、好きになってしまうと文句をいう余地がなくなってしまう。
この作品も冒頭、いきなりウディ・アレンの大映しから始まるので、まずはほっとする。『ギター弾きの恋』では主人公の台詞や性格はともかく、ご本人はほとんど登場せず、『インテリア』にいたっては当人の登場はゼロの上、シリアスで透明な家庭劇だった。いい映画だったけど。
銀行強盗のためのトンネルを掘ろうと、銀行の近くに店舗を借りてクッキー屋を開いたら大当たりして大金持ちになり、社交界に出入りを始めた妻は教養のなさを嘆いて若い画商に教養のレッスンを受け始めたかと思ったら会社が...というお話。
とりあえず、なんでもよろし。ウディ・アレンならそれでよろし。という映画。ちなみに原題は『Small Time Crooks』。邦題は、例の西武百貨店の広告コピー(糸井重里1983)から。
『巴里の屋根の下』(ルネ・クレール監督/1930)。
『おいしい生活』を観ていて、「あぶくのような映画だなあ」という感想を持ったので、これをセレクト。ほんとに、なんともあぶくがぱちんとはじけただけのような映画である。
男女のいろいろとか葛藤とかあるのだけど、本質的に軽くて粋でなーんにもない。なのにどこか詩情あふれるのですなあ。
1930年公開ということはトーキーの初期ということになるわけだけど、むしろそうだからこそ、音の使い方がとても繊細で効果的。飲み屋やダンスホールで音楽が鳴っている時は、ほんとにリアルに大音量になって、人物の会話は聞こえず、そこだけサイレント映画の表現となる。
男女がなんだかモメている店内を外から撮る時も音が消え、ドアが開くとわっと会話が飛び出してくる。ラスト近くの乱闘シーンでは、近くを通過する蒸気機関車の轟音がシンクロする。
戦前のパリの街並み、人々のファッション、街角を流れる歌。戦前の日本人が憧れたパリのイメージの、これが原型のひとつなのかもしれない。
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