2011年9月23日

和船と胴流し

最近、ティップランやタイラバが流行しているせいか、どてら流しという言葉をよく聞くけれど、もとはどこかの地方の言葉なのだろう。あんまり好きな響きではない。なんだよどてらって。意味わかってんのかよ。と、ちょっと言いたくもなる。

不確かな記憶だけど、胴間流しとか胴流しというものと同じではないか。要はエンジンを切って、風にまかせて船を流すことをいう。

ポイントらしきところの近くに来たら、風がどちらから吹いているか確かめて、釣りたい方の舷を風上に直角に当ててエンジンを切る。エンジンを切る前に、ちょっと後進を入れて行き足を止めたりもする。

で、そのまま風に対して直角に、素直に流れていく船が、いわゆる風流れ性能に優れた船ということになる。正確には、流され性能だ。これができれば、片舷3人で釣ろうと5人で釣ろうと、糸は釣り人に対してまっすぐ沖に出ていくので、釣りやすく、オマツリをすることもない。ところが、こんな船はなかなか少ない。

船が風に対してどう流れるかというのは、船体上部構造物の風の受け方と、喫水下の潮の受け方で決まる。キャビンがついている船は、それだけで風を受けるので不利である。

普通、船はバウが高くなっているので、ちょうど船の前部が風受けになって回ろうとする。船外機艇であれば、そこに潮を受けてブレーキがかかり、船のお尻を軸に回転しようとする。

かくして、たいていのかっこいいプレジャーボートは、せっかく風に直角に向けてエンジンを切っても、お尻からくるりと回って、風上に船尾を向けて流れていくことになる。ななめに流れていけば、潮流れ性能は良い方だといえるらしい。

2002年にヤマハから出たYF-23は、そこに気を配って開発した、たぶん最初の小型プレジャーボートなのだろう。船型の工夫で、なるべく素直に流れていくようにしている。胴流しというのは、日本の釣りでは非常に重要な要素なので、これは日本のメーカーとして正しい態度だといえる。要するに、シロギスを最高に楽しく釣るには、これが必要なのだ。

風にお尻を向ける船だと、片舷数人で釣る場合、糸を垂直に降ろす必要があるので、15号のオモリが必要なところを、風に素直に流れてくれさえすれば、5号か6号ですむ。この差は釣りの楽しさの点で、とんでもなく大きい。

で、もっとも風流れ性能に優れているのは、上部構造物が少ないか、あっての船尾側に寄っている、船内機もしくは船内外機艇だといえる。たいていの遊漁船は、そうなっている。上がまっさらでなんにもなければ理想だが、そうもいかないので、いわゆるセンターコンソーラーがよろしいということになる。

富美丸は、船内外機艇であり、センターやや後方寄りコンソーラーである。和船だから舷側も低く、風を受ける要素が少ない。船底もフラットに近いから、潮もあまり受けない。

そうするとですね。風に見事に直角に流れていくわけです。この快感は、ちょっと言葉では言い表せないものがあって、船足の遅さと騒音は港一であるけれど、釣り場に着いてしまえば、こんなに優れた船はないと。

船にはキャビンがついていないといけない。という人は多いけれど、釣りを主体にするなら一考の余地ありで、特にアンカリングよりも流し釣りが好きであれば、最高の釣り船は和船か、和船をベースにしたセンターコンソーラー(UF-23のハードトップでないタイプとか)であることは揺るがないと思う。

タイラバ、インチク、一つテンヤ、ティップランと、ここ数年人気の釣りはみんなこれに該当してしまうのと、大震災の影響もきっとあろうかと思うのだけれど、今年は中古和船の出物が、ほんとに少ない。去年のW-27を、なぜ買っておかなかったかと、時々、思い出したりする。

今、憧れている船はいくつかあるけれど、そいつを手に入れたとしても、きっとシロギスやタイラバで、仲間とわいわい釣るための和船は、別に残しておくだろうと思う。

和船が、なぜ日本の船であるのか。日本の釣りが、最高に楽しいからなのだ。

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