2011年6月 6日

お灸大会のこと

6月1日から4日まで、人吉にいた。毎年恒例の鮎解禁九州オフで、このところ五ヶ瀬も綾もサンザンなのと、鳥取にいたあるぽさんが故郷の人吉に帰ってきたこともあって、ここ数年、解禁日はぼつぼつと人吉に集まることになっている。

今年のメンバーは、あるぽさん(人吉)、CHAPさん(東京)、しげさん(群馬)、勝三郎さん(熊本)、安藤博士さん(熊本)、ナルミさん(宮崎)、ユミさん(宮崎)、私。後ろの3人は、主に宴会要員である。実際、私は今年も竿を出すことはなかった。というより、そもそも道具を持っていっていない。あれだけ熱中した鮎に、今、あまり関心がないのは話せば長いのだが、面白い話でもないので、まあ書くまでもない。

夜になって宴会になるのだが、不眠症というか夜更かし症はそのまま持ち越しており、1時や2時に寝られるものでもない。初日などは朝6時になって近くの温泉に行き、体が温まってようやく寝つくことができた。起きた頃には、みんな川で鮎に熱中しているわけで、それからお弁当を買ってみんなと合流して、帰る時だけは一緒に帰ってくる。

それから楽しく飲んで、また寝られないから、翌日も遅くまで寝ていて、また川へ行って合流して、一緒に帰ってきて、楽しく飲んで、また寝られないわけである。これはまあ、一度か二度、早起きして海釣りに行けば、ペースが戻ってくるのでいいのだけれど。

鮎釣りは川に浸かる釣りなので、昔は鮎漁師は短命だといわれた。体を冷やすことは、風邪以上に万病のもとである。そして、激しく体力を消耗する。そうやって釣りから帰ってきた仲間を見ていたら「ひとつ、こいつらにお灸を据えてやろう」という気になってきた。むろん、善意100%であって、慣用句としての意味はない。

以前、串間の旧家村オフに「せんねん灸」を持っていって、座敷に5、6人寝そべらせて、お灸大会となったことがあった。みんな「あちち、あちち」と喜んでくれたものである。

「お灸しましょかね。せんねん灸、買ってきたから」
「え」
「なんで」
「......」
「わかった。んじゃ、足の裏に湧泉という何にでも効くツボがあるから、そこからやろう。足の裏なら、多少何かあっても大丈夫でしょ」

「そいじゃ、お願いします」と言ったのは、しげさんである。この人の旺盛な好奇心と素直な心は、彼自身の未来をひらくとともに、一緒にいる人の心まで明るくする性質がある。

「うおわおー、ぎゃぎゃぎゃぎゃ、ちちちちちー」などとわめく。実は湧泉とは別に、その3センチほど下にあるツボにも置いた。ここは、副腎に効くとされるツボなので、素人考えではストレスに関係がある。感じる人にはけっこう感じるツボなのだが、ここまでの反応はあまりない。たぶん、生まれて初めてのお灸ということで、敏感になってもいるのだろう。

「大丈夫。ピークは10秒だから。跡も残ったりしない」
「うおぐおー、にゃにゃにゃにゃにゃにゃ、ききききき」
などといっているうちに、10秒過ぎた。
「どうです」
「いやー。熱かったけど、すぐに終わるもんだねえ」
「スペシャルなツボだから、なんかの効果はあるでしょう」

「実は、首が痛くて起きてるのもつらいくらいだったの。首もやってくれる」
「オーケー。んじゃ、上着脱いで」
「あ、なんか脚があったまってきたかも」
「でしょう。鮎は冷えるからね。とりあえず、直接、首にやらないで肩こりと冷えをとるツボからやりますね」
といって、肩井、天宗、腎ゆあたりを中心に灸をすえる。

「熱くないね」
「案外、肩や腰は熱くないのよね」
「ぽかぽかしてきた」
「じんわり、赤くなってるから、このくらいでいいかな」
各ツボに2度ずつお灸をすえて終了。

2時間後。

「いやー、お灸っていいもんだねえ。首、全然動かなかったんだよ。今、すごく楽になってる。」
「そりゃよかった」
「せんねん灸って、安く買えば1個10円ちょっとなんでしょう。こんなに効いて気持ちいいのに、なんでブームにならないのかな」

いわゆる「お灸をすえる」というような、熱くて苦しいイメージが強いからなのかな。と一瞬思ったのだが、実はそうではないことに気づく。お灸は一人でやれるものではない。夫婦なり家族なり恋人なり友人なり、お灸を置くのを手伝ってくれて、多少の熱さは笑ってやりすごせる、心の通う人が必要なのだ。確かに、今の時代にそんな人は、なかなかいそうにない。

今回のお灸大会は大盛況で、釣り仲間はもちろん、1日だけやってきたナルミさんとユミさんにも、きっちりお灸をすえてやった。喜んでくれていた。と、思う。

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