岩城宏之を読んでみる
中学校から高校に上がる前の春休み、というのかなんというのか、とにかく中学の卒業式を終えて高校の入学式を迎える休みの間の春の日に、FMラジオから岩城宏之のトツトツとした声が流れてきたのであった。なんでも、「若い人たちへの...」みたいな番組だったと思う。
岩城さんは、
「人間なんて、しょせんたいしたことはできないと思うんですよ」
「たとえばベートーベンが一人で9つの交響曲を書いたりして、どれもすごい曲で、音楽的にはもう、ものすごいんだけど、でもそれで地球の軌道が変わるわけじゃない」
「まして、私なんかが何をやろうと、たいしたことはないわけです」
「なんだけど、でも、何かをやろうとして、一所懸命ジタバタする」
「みんなそうやって、ずっとジタバタジタバタやってきたんですね、きっと。」
「そういうジタバタさ加減こそが、人間の価値なんじゃないかと思うわけです」
のようなことを言っていた。「ジタバタ」という時に、うまく舌が回らなくて、あるいは江戸っ子的に回りすぎて、どうも幼児のような変てこな発音になるのだった。
それ以来、岩城宏之という人が好きになった。そして、この言葉にずっと救われ続けてきた。人生はジタバタし続ければ、それでよいのだと。
エッセイもたくさん書いていて、「森のうたー山本直純との芸大青春記」と「フィルハーモニーの風景」は読んでいた。どちらも面白かったので、今回、「楽譜の風景」「九段坂から」「指揮のおけいこ」「音の影」「オーケストラの職人たち」をamazonでまとめ買いして、ぽつぽつと読んでいる。
一冊選べというなら「森のうた」。芸大打楽器科の二期生として、上野の山で山本直純や林光らと過ごした日々のお話。
コメント
JUNさん、おしさしぶりです。ひょせんです。
岩城宏之さんの著書を読んだことはないのですが、その風貌からわたしが勝手に想像していた熱いイメージよりも、ずっと情に流されないクールな演奏スタイルで、現代音楽の初演を任されることが多かったようですね。楽曲に対して沈着冷静な解釈をすることで、作曲家からの信頼を得ていたのだと思います。
JUNさん紹介のベートーベンの音楽に対してのエピソードからも、ただ陶酔するのではなく、一歩引いて大きな視点から眺めてみるという、岩城さんのクールな面がうかがわれると思います。
話題が大きく変わります。
このところぼつぼつ自作スピーカーの設計を考えていたのですが、FE103En-SやFE108Sを使ったメイン・スピーカーとしての用途で設計した機種の中で、以前こちらで話題に上ったセンター・スピーカーにも使えるんじゃないかと思ったものがあったので、とりあえずご報告します。
簡単にいうと、JUNさん宅のホームシアターのリア・スピーカー「BH-1026S(R-101)」のメイン・スピーカー版といえるような機種で、とりあえず型番は「BH-1030S」です。
外観はこんな感じです。
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yh1305/bbs-pic/BH-1030S_005s.jpg
BH-1026S(R-101)と同様に上面開口なので、上からのぞきこむと、
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yh1305/bbs-pic/BH-1030S_005s2.jpg
ユニットは、スーパースワンで使えるFE108SやFE103En-Sがベストですが、FE108E∑でも鳴らせると思います。左右2本で15ミリ厚サブロク合板を3枚使います。
幅25センチ、高さ105センチ、奥行き34センチで、ユニットのセンターの高さははスーパースワンの93センチと大体同じ90センチです。メイン・スピーカー用なので、低音もしっかり出るように、ホーン長は2.9メートルあります。床や壁によるホーンの延長効果は期待しないので、スーパースワンよりも長めです。
BH-1026S
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yh1305/spg10-11/spg10-11.html
と同様に、中高域と低域がほぼ同じ位置から出る点音源効果によって、音像のまとまりが良くなり、音場感も良くなることと、
同じく上面開口の BH-1025S
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yh1305/spg10-10.html
でも得られたように、ホーン開口とユニットの音の相互干渉が少ないので、中低域の音やせも起こりにくく、深い低音が出やすいというメリットがあると思います。
BH-1030SやBH-1025Sでは折返しが2回増えてW字構造になることと、ホーンの長さとボリュームが増えるので、超スリムでシンプルなU字構造のBH-1026Sほどの開放的な鳴りっぷりにはなりませんが、メイン・スピーカーとして十分なボリューム感と力感が発揮できると思います。
とりあえず、ご報告まで。
Posted by ひょせん at 2011年4月30日 10:01
ひょせんさん
すみません。なぜかMovable Type のフィルタにかかったようで、いただいていたコメントが保留になっていました。
BH-1030S、面白いですね。この間まで使っていたFE-108Sがありますので、いずれセンタースピーカーも作ってみなくてはな、と思っていました。
これ、高さをなるべく低くしたバージョンを作ることがあれば(95cmくらい?)、ぜひ図面がほしいと思います。私の環境では、床に近いところから投影しますので、今のスーパースワンでもヘッドが映りこんでしまうことがあるので。
Posted by JUN at 2011年5月 3日 15:31
ひょせんさん
岩城宏之さんのこと、今回、まとめてエッセイを7冊ほど読んでみて、どれも非常に面白かったです。カンシャクもちでナイーブなところもあって、キレイゴトを言わないで、自信家かと思えばすぐクヨクヨする。
で、ものすごく本音で書くところがあって、たとえば、こんな具合。(以下、「森のうた」より)
「ぼくたち芸大生は、だから、芸大に入れなければどこ、そこにも入れないからあそこ、というように、これはこれで、差別をしていた。つまり、才能はもちろんだが、芸大にはものすごく勉強していなければ入れなかったので、そういう意味では、芸大にはブスが多かった。」
「(芸大には)何やら階級的というか、人種的というか、とにかく根強い差別が存在していた。少数民族のくせに、他を睥睨して勢いのよいのが作曲科と指揮科の学生である。エリートづらで天才ぶり、そのくせ他人を怒鳴りつけたりする野蛮な方法ではないやり方でいばっているから、いやらしいのだ。(中略)二番目の上流民族は、ピアノ科だ。(中略)特に女の子が多いから、良家の子女風で、鼻もちならない。次がバイオリンをはじめとする弦楽器科で、へたなくせにハイフェッツとかメニューヒン流に小道具を小脇に抱えて、闊歩している。誠に憎たらしい。ここまでがいわば先進民族である。
あとはもう、被差別民族となる。大多数は声楽科の男女である。本来、頭が空っぽでなくては、声が大きく響かないわけで、だから幸福なことに、第二級民族という、自覚がない。それに、学内でもっとも数が多く、民主主義、多数決の原理ではびこっているのだ。(中略)
最後に登場するのが、ぼくたちのタイコ族、正確には管・打楽器科である。(中略)しかも、タイコは管・打というように順番からして管の次なのだから、タイコ屋は下層中の下層、少数中の少数で年中差別を感じているような状態だった。少数だからといって、トキのように保護を受けたような覚えもない。」
ご一読をおすすめします(笑)。
Posted by JUN at 2011年5月 3日 15:59
JUNさん ひょせんです。
コメント中にいくつも怪しい画像へのリンクをはってしまったのが、ふるい落とされた原因だったのでしょうか(^^;
岩城さんの芸大の学生における階級論、これだけとってみても面白いですね。芸術家志望の学生たちの習性を輪の外側から眺めつつも、自らの立場を最下層の少数派と銘打ってさげすむ卑屈さに、何か屈折した青春を感じてしまいます。(笑) 機会があれば、探して読んでみたいですね。(^o^)
前回の投稿でご紹介した「BH-1030S」は、背を低くするといろいろなバランスが崩れてしまいますので、ちょっと代案を挙げてみます。
ずっと以前FE127E用に設計した同じく上面開口のバックロード「BH-1207V」というのがありまして、全高は89センチ、ユニットのセンターは床から77センチで、当時描いた内部構造の図はこんな感じです。
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yh1305/bbs-pic/BH-1207V_01s.jpg
この機種はわたし自身では作っていませんが、実際に作った方の感想では低音もしっかり出てなかなかの好評をいただきました。
厳密には内部は左右対称ではないのですが、外観は左右対称ですしサウンド的にはセンター・スピーカーとして何ら問題なく使えると思います。
ホーン長は「BH-1030S」とほぼ同じ長さがあります。このキャビネットを強化、FE108S用に諸々のパラメーターを変えて再設計したものが良いかもしれません。
「BH-1207V」がキャビネット2台で15ミリ厚サブロク合板2枚でしたので、FE108S版ですと、幅と奥行きが数センチずつ大きくなるのと、フロントバッフルを2枚重ねにしたりして、サブロク合板を2.5~3枚使うことになると思います。
センター用に1本のみ作るのももちろん良いと思いますが、FE108Sが2個余っているようでしたら思い切って左右2本作って、映画再生ではセンターとサラウンド・バック(高さ50センチの台が必要?)、音楽再生ではスーパースワンとは別の意味の点音源のセカンド・スピーカーとして切替えて使ってみるという手も悪くないのではないかと思います。(^o^)
と、こんな案もあります。
Posted by ひょせん at 2011年5月 3日 17:48
ひょせんさん
うわー、6.1chですか。一気に2chも出世してしまうなあ。DTS-HDですよね。視聴ポジションのソファの真後ろは出窓になっているのですが、今計ってみると奥行きが26cmしかありませんので、BH-1207Vを後ろの頭上に設置する案は、ちょっと無理のようです。が、何かほかの方法でやってみたいな。
BH-1207Vの音道構造、よく考えてありますね。D-102にちょっと似ているなあと思いました。しかも上面開口ですから。
経験がないのでなんともわからないのですが、サラウンドバックに出力される音域というのは、どんなものなのでしょうね。やはり、かなり低い方も出てくるものなのでしょうか。あと、セッティングは高い位置でもいいものなのでしょうか。
Posted by JUN at 2011年5月 3日 19:19
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