2011年4月12日

感謝と思いやりのココロ

感謝と思いやり。などという古風で陳腐ともいえそうな言葉が、このところ自分の中で何か新しくて切実なもののように思えてきた。

愛にみちた世界に、愛という言葉はいらないように、平和に満ちた世界で、平和を叫ぶ人はいないだろう。だから、たぶん、自分を取り巻く世界、あるいは自分の内面の世界も含めて、この二つの言葉が、コンビニのハイボールなみに薄まっていたのかもしれない。

自分探しとか、自分磨き。あるいは自分らしくとか、自分を高めるとか。そういう言葉に、どこかしら危うさを感じるのは、それが結局、自分に終始しているからだろうと思う。努力、忍耐、根性、克己、勤勉などというものもまた、結局は自分一人でできる話である。これらはみな、「一人でできるもんワード」なのだ。

だが、感謝とか思いやりということになると、一人ではできない。必ず相手なり外的世界なりというものとの関わり合いの中で生まれてくるものだ。だから、こっちの方が、成長の過程でずいぶん後になって出てくるものなんではないかと思う。

人は生まれ出て、何もできない赤ちゃんの時代から、たいていのことはできる大人になっても、まだしばらくは、なにかに依存して生きていく。それは親の愛や経済であったり、それに代わる愛や経済であったり、時には哲学や思想であったりもするのかもしれない。

次には、いわゆる自立をしなくてはならない。とりあえず経済的に自立することができたら、人の意見や価値観に盲目的に振り回されるような、社会的な依存状態から脱して自立することになる。世のサクセス本は、この状態まではたいていは役に立つのだろう。

次の段階では、「自立した人間同士が連携しあい、お互いに頼り合う」段階に入っていく。今のところ、ぼくに見えている人間としての成長の過程はここまでだ。この先もきっとあるのだろうが、現在、ここまでしかはっきりとは見えていない。

とりあえず、この段階まできて、ようやく「感謝」とか「思いやり」というものが、いかにスゴイものであるのかがわかってくるように思う。それは同時に、自分の話ばかりではなくて、人の話を聞くことであるとか、自分を困らせる相手の欠点を指摘するかわりに、そうした状況を招いたのは結局は自分自身であることを受け入れる勇気であるとか、愛がさめた相手をすら愛することができるとかいうことが、いかにスゴイことであるかということだ。

被害意識に凝り固まった人間はかなしい。そうした人にとって、自分の座標は絶対であって、うまくいかない理由は、常に自分の外部にあり、その外部は永遠にコントロール不能なものなのだ。だから、いつまでも苦しむことになる。「自分主義」の危うさは、ここにもあるのだが、ちょっと考えれば気づけるはずなのだ。この世界で唯一コントロールが可能なのは、他人ではなく自分自身だということを。

先日、長女の就職問題について、短い話し合いをもった。子供というものは、親が願うことと反対にいきがちであることは、自分自身の例からもあきらかなので、あまり親として短絡的な意見は言わないことにしているのだが、やはりこの時期になって、ほとんど就職活動をしていない大学4年生の親としては、何か言わざるを得ない。

で、何か言おうとして、気づいた。この子は、たぶん、人間としての基礎はできつつあるから、この先もどう転ぼうと、たぶん、大丈夫なのだと。その基礎とは、冒頭に書いた感謝と思いやりのココロである。まだまだ自分勝手で、親の恩などはどこ吹く風でもあろうけれど、その萌芽というものは見える。これさえ見えれば、親としては何もいうことはないのだ。

人生というものは、何が起こったかではなく、それにどう反応したかで決まる。そしてその反応は、自分で選び、決めることができるものなのだ。人に裏切られたからイコール相手を憎む、ではない。計画していたことがうまく進まないから、イコール落胆、でもない。

自立して初めて、自分の周りにいる自立した人間の素晴らしさが見えてくる。そして、そうした人たちと手をつなごうという思いが湧いてくる。そこから先が、人生のほんとうの面白さなのだと思う。そして、高度に自立した人間に特有の特性が、感謝と思いやりに満ちたおだやかさを備えているということなのだ。

自分にとらわれず、自分から自由であれること。そして初めて見えてくる他人の素晴らしさと、彼らと連携することの喜びと実り。そんなものに私も近づきたいと思うし、願わくば長女も、いつかそんな世界を知ってほしいと思う。

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