さだまさしの宮崎の母
熊本から安藤博士さんと勝三郎さんが一泊二日で遊びに来た。今回は、わざわざ飲みに来たのである。といって夕方から急いで飲むこともないので、ボートやヨットが並ぶ宮崎マリーナを男三人で散策などする。
一軒目は、「幸魚」。知る限り、宮崎の居酒屋系ではここが一番平均打率が高い。いつも、何かの発見を与えてくれる店なので、釣り師三人で飲むにはベストチョイスかと思う。のれそれ、ブリカマの塩焼き、シメ鯖、椎茸の焼いたの、カサゴ唐揚げといったものとビール、日本酒。
二軒目。安藤さんは最近、ギターを始めたところなので、ギターが弾ける店が良かろうと思ったのだが、そういう店は土曜の夜ともなればライブをやっており、一般客が乱入できるタイミングは多くはない。それに大音響になっていることが多いので話をしづらいということもある。
こちとら、自分がギター弾きなので、どっちかというと他人の演奏にはあまり興味がない。これはギター弾きの特性なのかどうか知らないけれど、たいていはそうだ。安藤さんも始めたばかりとはいえ、ギター弾きなので同様である。
そこで「かすみ」を思いついた。77歳におなりのかすみママが一人でやっている小さなスナックだ。スナックとはいえ、ここにはカラオケもなければ女の子もいない(20歳の女の子が4人いると思いなさいとママはいう)。でもギターが2本置いてある。同席する客がいれば、空気を読みながら自席でギターを弾くことができるし、客が話に夢中であれば弾かなければ良い。勝三郎さんは、しばらく一人で街に消えた。
スナックかすみは、さだまさし、およびその父・雅人さん、および石川鷹彦が寄る店として一部ファンには非常に有名なところだ。かすみママがさだまさしのファンで、いつの間にかそんな縁ができた。店にあるミニコンポは、先頃亡くなった雅人さんがプレゼントしたものだ。
なぜか医療関係者のお客が多いのだが、あの「風に立つライオン」のモデルである柴田先生も顔を出す。その柴田先生は雅人さんの主治医であり、雅人さんは年に一度、わざわざ健康診断を受けに宮崎まで来られていた。
さだまさしのお父さんといえば、私にとっては『転宅』である。以前、この店で『転宅』を聴いた時、ぼろぼろ泣いた。男の涙を見られてしまっては仕方がない。それ以来、かすみママとはのっぴきならない関係になっているのだ。
いずれにしても気楽な店なので、バカをいいながら安藤さんと飲んでいたら、森下先生がやってきた。この人はS&Gが好きでギターが上手な宮崎大学医学部の教授だ。かすみママによるとほとんど寝る間もなく研究を続けており、土曜の夜の「かすみ」が唯一の息抜きなのだという。二人で『キャシーの歌』と『早く家に帰りたい』と『四月になれば彼女は』と『サウンド・オブ・サイレンス』をやる。
やがて団塊世代の5人組のお客がなだれこみ、ほとんどが初めての来店だったようなのだが、委細かまわずギターを持って乱入して、今度は60年代歌謡曲とグループサウンズの伴奏係となる。森下先生はカウンターでピアニカを吹く。わいわい飲んでいるうちに、勝三郎さんが合流して、気づくともう1時半だ。
お開きかと思うと、5人の中からさだまさしのDVDが現れて『風に立つライオン』の上映。あの方たちも医療関係者だったのかな。
コメントする
(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)