2011年2月 3日

夢の大相撲

あれから、WEBを見たり手元の相撲関係の本をめくってみたりした。

そもそも...、という話をすれば相撲が国技であるというのが間違いの元だ。これもそんなに古い話ではなく、三田村鳶魚によると江戸時代に相撲が国技であるとは誰もいわなかったらしい。

ことの起こりは、明治42年にそれまで勧進相撲として神社の境内などを借りて行っていた興行を、常設会場でやれるようにと両国に相撲場が出来た時に、頭のいい人がいて「国技館」としたらどうだということになった。

このちゃっかり者の名は、三代目の尾車親方という人だそうだが、これ以来、国技という名が定着したという。つまり、国技館という名前が先にあって、慣習的に国技と呼びはするようになったけれど、現在でもどこかに定めがあってそう呼んでいるわけではない。

その恩恵を今まで相撲界はたっぷり受けてきたわけだけれど、2008年に法律が変更になって、税制上の優遇がある公益法人として新たに認可を受けなくてはならなくなった。

そこへもってきて、野球賭博だの八百長だのという話であるから、文部省はふんぞり返るわけである。国技ニアリーイコール公益法人従って文部省えらいという図式は、一人の相撲ファンから見て気持ちのよいものではない。相撲は日本政府ができるはるか昔から相撲なのだ。

この際、公益法人のことはあきらめて、国技という呼び名も返上する。と宣言してみればよいと思う。プロレス団体と同じように、ただの興行会社になればよいのだ。そうすれば、形式論理の好きな(つまり自分のことは棚に上げる)マスコミなどに、いじめられることもなかろうし、日本のコクミンも自分たちが何を失ったかよくわかると思うのだ。

公益法人であろうとなかろうと、相撲ファンの目が変るわけではない。興行会社になれば八百長が横行して人気が下がり、相撲などは消滅するという意見もあるかもしれないが、実のところあの全盛を誇った千代の富士時代ほど、史上八百長時代が盛んだった時代はない。

ただし、八百長だけで生き抜けるほど甘くもなく、取りこぼしをおそれて下位に依頼する上位の八百長というのは「あの人には勝てないから、この際、星を売っておくか」というものらしい。中位、下位力士にしても、実力でトントンくらいは勝てないと八百長グループに入れてもらえないというのもその通りだろう。

あっていいものであるとも必要悪とも思わないが、もともと仲間意識の強い特殊な集団であるという特性は、いかに体質改善をしようと消えるものではないだろう。

相撲は手を見せて客を喜ばせるものである。江戸時代には、まったく相撲をとらずに巨大な体躯だけを見せる横綱も存在した。相撲は真剣勝負の格闘技であると同時に、ある側面で芸能であり、祭りなのだ。相撲道などというものがあるとすれば、まさに本筋はそれなのではないか。八百長の存在ですべてを失うほどの了見につきあわなければならないのであれば、公益法人も国技もいらないではないかと思う。

というのが提案その1。

もうひとつは、貴乃花を理事長にして、八百長行為をした力士を即時解雇する。おそらく幕内力士の数は半分かそれ以下になるが、そこからやり直せばよいと貴乃花なら本気でそう考えている。

そうすると、全力士がガチンコ力士になり、全取り組みが真剣勝負のガチンコになる...わけでもない。人には感情というものがあり、手心というものもある。ガチンコの権化のような貴乃花でさえ、兄弟対決で若乃花に勝ちを譲った。あのくらいの潔癖な人でさえそうなのだ。

だが、「不健全な」八百長は減るだろう。番付は実力を「ほぼ」反映したものになり、相撲は競技性を高め、力士は夜遊びをやめて早く寝るようになり、立ち合いはアマチュア相撲のようなものになる。

さて、どちらが夢のある話に近づくのだろうか。私はどちらに転んでも良いのだけれど、お相撲さんはいつまでもお相撲さんのままでいてほしいのだ。スポーツとかアスリートとはちがう、ただのお相撲さんでいい。

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追記:

放駒理事長の「これまで八百長はなかった。これは新規に起こったこと」という言葉が気になった。そういわなくてはならない役回りであるにしても、そんなわけはなかろう。

徹底追求するというのならば、板井氏や逆鉾氏など歴代の仲介役の話も聞くべきだろうし、八百長を告発して、後援会副会長とともに同じ日に同じ病院で急死した、板井氏の師匠・高鐵山の一件も掘り起こさなくてはならない。

もはや公益法人のことは沙汰やみの気配濃厚なのだから、やるならいっそやればいい。少なくとも昭和40年代からこちらのことであれば、まだまだ証言は集められる。

次の焦点は、そして関係者がもっとも恐れているのは暴力団のことになると思う。巷間行われている相撲賭博にからんだ八百長があったのかどうか。これは星の貸し借りなどとは次元のちがう話になる。

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