菅さんの三つの政策
新年早々に考えるようなことではないのだけど、ちょっと思いあたったことがあったので軽く。
最新の内閣支持率は21.0%、不支持率は60.4%ということになっている(時事通信社・2010/12/13調べ)。支持率は、ほとんど鳩山内閣末期の19%に迫る。大体、内閣支持率が30%を切ると、総理大臣は退陣なり解散総選挙なり、一応、身の振り方を視野に入れるべきものとされているらしいのだが、今のところその可能性はほとんどゼロのように見える。
そもそも、この支持率の乱高下ぶりはちょっと前代未聞だろうと思う。発足時の6月が41.2%、消費税問題で参院選で大敗した7月が31.8%、8月はちょっと持ち直して36.0%、小沢一郎さんとの総裁選に勝利して再選した9月は続伸して45.6%、10月は39.2%で不支持率と並び、11月に27.8%と急落、そして12月はさらに下がって21%と、こういうことになっている。
尖閣問題、それに付随する情報漏洩問題という事件はあったとしても、これだけ支持率が変化するというのは、要するに国民はじれているということではないのかと思う。
考えてみると、菅直人という首相は、かなりまともなことをやろうとしてきた。そのうち三大まとも政策を挙げれば、「消費増税」「TPP」「(財務大臣時代も含めた)円安誘導」となる。前二つは、自民党時代からその必要性は誰もが認識しながら、誰も手をつけられずに先送りにしてきたもので、政権を担う者として、これは逃げて通れないでしょうという覚悟はよくわかる。
よくわかるのだが、それが結局支持率を下落させ、民主党の勢いも後退させてしまった。要するに、唐突に見えてしまったわけだけれど、つまりそれだけ、かつての自民党が得意とした「醸成力」というものが、菅首相本人にも民主党にも希薄だったということなのだろう。
安全保障の面からいえば、鳩山前総理が犯したミステイクはあまりにも重く、失った外交的陣地と時間もあまりにも多大だった。そういう逆風の中で、参院選のテーマに消費税を持ち出して、うまくいくはずはないじゃないよのさ。と、ピノコもそういっている。しかも、尖閣問題が起きて、さらに新しい政策を打ち出すゆとりはなくなってしまった。
勇気は買うけど、空気はちがった。かつ間の悪い時に、間の悪いことが起こってしまった。管さんが政権をとって、ただひとつはっきりと日本が前に進んだといえるのは、これでもし自民党が政権をとった時に、民主党が消費税増税に反対できなくなったということだろう。どちらも、それが必要であるというスタンスに変わりはない。
円安誘導については、政策の最優先課題にするべきだろうと思う。というより、国の全知全能と全力を傾けて、これに当たるべきだろうと思う。今現在、これより大事なことはひとつもない。
これによって経済も雇用も財政も好転する。就職氷河期も一気に緩和されるだろうし、TPPによる農業への打撃も大幅に減らすことができる。現在、日本が輸入する農産品の関税は、平均で21%ということなので、仮に円が21%下がって97円にでもなれば、農産品をすべて無税化しても実質チャラだ。しかも、その分、輸出は大幅に伸びる。
昨年は、先進国間で自国通過を安くする戦争が起こっていたと思う。経済が低調になれば自国通貨は安いほど良い。そして、少なくともEU、米国、日本の三者については日本の一人負けになってしまった。それは明治時代の三国干渉とか、昭和のABCDラインを思い出してしまうような、理不尽な出来事だったのではないか。
円安誘導は市場が大きすぎて無理といわれるけれど、ほんとうだろうか。それならなぜ、実体経済がもっとも悪い日本が、もっとも通貨高になってしまったのか。昨年1年間で米株は11%も上昇してリーマンショック以前の水準に戻したというのに、日本だけが通貨高による立ち後れに甘んじているのか。
金融のテクニカルな部分と外交の両面で、国同士の戦争になっているとすれば、戦い方はあるはずなのだが。
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