2010年12月20日

ビロウ島のオオモンハタ

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富美丸でビロウ島へ行く。

というのは昨年来のテーマであったわけだけれど、どうしても湾内のキス、カサゴ釣りが本性として好きであるということもあり、さらに、そういう仲間が常に同乗しているということもあり、加えて富美丸の駆動力ではよほどのナギでないと、あそこをめざす気になれないということもあって、なかなかできずにいたのだった。

以前、一度だけ流星号さんの船長で近くまで行き、ヤマガタ氏の竿にけっこうな型のマダイが掛かったこともあったのだが、何しろ揺れと暑さに二人ともまいってしまって、釣りとしてはホウホウのテイで引き上げたという格好になった。

門川町の沖に浮かぶビロウ島は、カンムリウミスズメの世界最大の繁殖地である。カンムリウミスズメという鳥は、あまり飛ぶのがうまくないために、ナンギにも日本各地からこの島をめざして「泳いで」やってくる。姿はちゃんとした鳥のように見えるのだが、実のところ黒くて小さなペンギンなのであった。

わが富美丸も、30馬力のディーゼルエンジンでもって、ペンギンの歩みでじりじりと島ににじり寄っていく。そろそろ波が高くなってきそうな海域に入っても、海はしんと静かで、波高1mという予報通り、天恵のごときべた凪であった。師走の空は青く晴れて、風もない。

日向市に湯村武広という人がいる。ぼくはこの人の釣行記を、スミスという釣具メーカーのサイトで読み、一度連絡をとりたいと考えていた。文章が相当しっかりしていたので、これは相当しっかりした人物だろうと思ったわけだ。

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だが、考えてみると、私だって文章は相当しっかりしている。で、人物がしっかりしているかというと、これは相当、しっかりしていない。だからというか、にも関わらずというか、湯村さんという人は、会ってみるといい釣り師で、いい男だった。今日は彼の案内で、ビロウ島なのだ。

インチク・鯛ラバの釣りである。ここ数年、急激に普及しつつあるタックルだけれど、元はといえば漁師の道具だ。うろ覚えで書くが、インチクは日本海、鯛ラバ(鯛カブラ)は九州西部の漁師が使っていたものだと思う。偶然の一致なのかどうだか、どちらも構造と思想はよく似ている。

伝統的な漁師の釣りとの違いは、この釣りが魚の集まる瀬に船を付けずに、狙いの魚が食べていそうな小魚の群れを魚探で探して、そこに仕掛けを降ろすという点にある。瀬に船を固定するのではなくて、小魚を追いかけるのだから、はじめに魚探ありきということになる。

ベイト(餌)。という言い方に、相変わらず小さな抵抗感はあるのだが、そういってしまった方が通りは良い。それはアジであったりイワシであったり、キビナゴであったりするのだけれど、魚探にそうしたものの影が映れば、きっとそこにはそれを食う魚がいるだろうと考える。

湯村さんによると、「今日は全体に小魚が少なくて、いても底に張り付いてる感じ。青物は望み薄だけど、ハタは食ってくるでしょう」ということ。

魚探をのぞくと、なるほど岩礁帯の底にへばりつくように、うっすらと青い影が連なっている。そこに仕掛けを降ろしてリールを巻く。ジギングのようにアクションはつけずに、ただ巻いてくるだけだから楽である。大体、水深の半分か3分の1ほど巻いたら、また底に落として、巻く。

ルアーというのは立ってやるものだという観念が広くあるけれど、富美丸は和船だから、漁師のごとく座ってリールを巻く。舷側が低いから立ってやると海に落っこちるし、キャスティングは別にしても、この釣りの場合、立ったからといって、さほどのメリットもなさそうだ。船の低いところに座っているので、揺れをやり過ごすのも楽である。

落として巻くだけだから単調なようだけれど、案外、ちっとも飽きない。仕掛けが落ちていく最中にアタリがあるかもしれないし、底に着いた瞬間に食っていることも多いので、今食うか今食うかの緊張感が持続する。午前中、ほとんどアタリもなく過ぎていったけれど、釣りとしては文句ない楽しさであって、すでに「これでお土産ができれば御の字」というような満ち足りた気分になっていた。何しろ最高の天気で、稀にみる凪日和なのだしな。

午後2時頃から、一気に入れ食いモードに入る。この日最大のオオモンハタは、ほとんど中層で食ってきた。それも、湯村さんに話しかけてリールを巻く手がゆるんだ瞬間に、ごつんときた。感覚としては、中層でいきなり根掛かりをした感じ。青物かと思うほど、竿が突っ込むのだけれど走らない。マダイにしては首も振らない。そいつは52cmもあった。この魚としてはけっこうな大物なのだ。

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3尾釣ったところで、竿じまいして昼寝に入る。入れれば釣れることはわかっているのだが、せっかくの魚をお荷物にはしたくない。釣ったら食べることを鉄則にしている以上、胃袋レギュレーションは守らなくてはならない。と書いてしまえば格好よすぎるのだが、まあ、こういう習慣なのだ。だいたい、ふだんは、家族のささやかな胃袋を満たすほどにも釣れはしない。

ビロウ島のインチク・鯛ラバは、青物が回っている時にはインチクを使い、マダイが濃い時には鯛ラバを使うことになる。どちらを使っても、どのように釣っても、魚がいれば同じように釣れるのだが(相当早巻きをしてもマダイは食ってくるという)、人間の側の工夫というか配慮として、そのように使い分けをする。今日のオオモンハタは、マダイも青物も釣れなくても、とりあえずつきあってくれるというような魚らしい。

まだまだ豊かな海。と書こうとして、ちょっと手が止まった。昔の釣りの本には、よくこういうフレーズが書いてあったっけ。

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コメント

「オオモンハタ」はとても美味しかったって、ビッグフィッシングの解説者が先週の番組で言っていたよ。

天気も最高で、昼寝までできるとは、なんという贅沢だろうか。
うらやましすぎる~。

こちらは先月の始めから、1ヶ月あまり出船できていません。
さすがに冬の日本海は厳しいです。
ストレスが溜まりまくっています。

今週こそは!

balanceさん

本名で呼んでいいですか^^;。

オオモンハタは、かなりうまい魚だと思いました。
きれいな白身にはんなりと脂がのって、甘みがある。
と書けば、80%くらいは合っていると思います。

しかし、昔、同じ谷山の校舎に通っていたのが、
今は日向灘と日本海で、同じように釣りをしていて、
それがネットでコメントを交わすというのは、今さらながら、
不思議な感じがしますね。

そうとう文章がいい人がそうとうにいい魚を釣ったね。鍋かな。

Joe's(ジョー) さん

オオモンハタは、皮をあぶった造り、煮付け、鍋、ムニエルとなりました。
どれも相当うまかったのですが、鍋はまた格別ですね。
まだ少しサクが残っているので、明日の朝はこいつのヅケで
お茶漬けになると思います。

それはそうと。

ずいぶん昔。まだJoe's(ジョー) さんがへら専門の釣り師だった頃に、
日南海岸で一緒にゴムボートでキス釣りをした時の釣行記が出てきました。
近くここにアップします^^;。

耳に水が入ってグワングワンとかブインブインとかってなる釣行記でしたね。

この前はどうも。

ハタの味はなかなかのものでしょう!!

また、行きましょう。

ところでカワハギなんですが、この辺では秋がいいらしいですね。

来年のその時期に向けて用意しておきます。

あれからポイントも数か所教えてもらいました。

しんさん

でいんでいん、でした^^;。


ロッカーT(湯村)さん

先日はお世話になりました。年内に波のおだやかな日があれば、正月の魚をせしめに行きたいなと思っています。

セブンスライドはギアラボに在庫なし。メーカー(個人ですが)の製造が間に合わないほど売れているようですが、入り次第送ってくれるように頼みました。相当、釣れるようです。

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