2010年10月16日

やはり、和船...のこと

なんとなく気になって立ち寄ってみた「船屋」(屋号である)に、こんな中古艇が出ていた。

w27hf.jpg

ヤマハのW-27HFという艇体に、どこぞから持ってきたコンソールをつけ、さらに物置きとしてバウ側に大きなFRPの箱がつけてある。こいつに、スズキの4スト90馬力の新品、もしくは4年落ちの船外機がつく。もとは、長崎あたりでイセエビ漁に使われていた艇体らしい。

最近になって知ったのだが、和船の艇体というのは、原則、上部構造物がなんにもないタライのような姿で売っていて、そいつにコンソールをつけたり、エンジンをつけたりいろいろして、1隻1隻、承認を受けるものであるらしい。だから、こういうカスタマイズが当たり前のことのようだ。

宮崎沖周辺で、釣りを基準に船を選ぶとすれば「絶対に和船である」という人は多い。和船の反対は洋船とはいわず、まあプレジャーボートなどという。どこがちがうかを簡単にまとめると、こんな感じになる。

・船底の形
和船は全体に平たく、ボートはハルのV字が深い。

・ブルワーク(舷側の高さ)
和船は低く、ボートは高い。

・上部構造物
和船はせいぜい小さなコンソールくらい。ボートはカディなどがつき、横からの投影面積が大きいことが多い。

・デッキの有効面積
構造物が少ない分、和船の方が広い。

・かっこよさ
一般的に、あるいはどう考えてもボートの方がかっこいい(と思う人が多いだろうと思われる)。

もっとも、こんな風に二者択一的に割り切れるものではなくて、両者の間には相当なグラディエーションがある。たとえば船形にしても、和船に近い平底みたいなボートもあるし、上部構造物がほとんどないボートもある。どちらかというと、典型的な(米国風の)フィッシングボートは、むしろ国産では少数派かもしれない。一応、便宜上、こういう分け方ということで以下の文章も進める。

さて、上のような構造から、波切り性はボートの方が優れているので、荒天時でも安定して走行可能。和船は飛沫をかぶりやすいけれど、静止安定性は一般的にボートより優れる。また、ブルワークが高いために、ルアーのような立って操作したい釣りの時はボートの方が安心感があり、和船は舷側が低いので、クーラーに座ってのんびり釣るのに向いている。

流し釣りの際、ブルワークが前の方ほど高く、上部構造物も大きめのボートは、船首が風下を向きやすくなる傾向がある。和船は風に対してきれいに片舷を向けて流れてくれる。加えて、デッキが広い分、大人数で釣りをすることが多ければ、和船の方が良い。私の場合、この点はけっこう重要かもしれない。

さて、宮崎沖で釣りを基準にするなら、なぜ和船であるのか。その理由も、最近になってわかるようになってきた。外洋に乗り出していく宮崎の釣りは、波長の長いうねりや波に立ち向かうことになるわけで、全長は長い方がいいのだが、たとえばボートの26フィートとなると途方もない値段になってくる。

また、全体に遠浅で、砂地に点在する根を狙ってアンカリングする釣りが多いので、静止安定性も重要。特に浅い根は、そこだけ波が大きくなるため、少しでも横揺れが少ない方がうれしい。さらに風への安定性の高さから、アンカリングした時の左右の振れも小さくてすむことになる。

こういう次第で和船の良さばかりが目立ってしまうわけだけれど、富美丸を繋留している門川周辺では、案外和船は少数派で、23フィート・90馬力クラスのボート、たとえばヤマハのUF23あたりがスタンダードになっている。釣り場が近く、それほどシビアな状況にはならないためなのか、どうなのか。

で、写真の船だけれど、塗装のゲルコートが白く、和船にしては幅広で(最近のヤマハ和船のトレンドらしい)、コンソールやTトップもそれらしい形をしており、ちょっと和船というよりも【日本のセンターコンソーラー】と呼びたい、まとまりの良さを感じた。まあ、位置はセンターより後方だけど。

門川からビロウ島あたりに、すいすいと移動できて、キスが釣れないとなれば延岡沖くらいまで遠征もし、いざエンジンを切れば風に素直に流れ、救命浮環をザブトンに、のほほんとした釣りにも似合うという、これはなかなか、いい船なんではないかと思うわけである。

現在、艇体だけの素の状態なので、艤装が済んだらまた見に行ってみよう。


追記:
実は、周囲の「釣りなら和船がいいよ」という声をよそに、ヤマハのUF23に狙いを定めて中古船を探していたのでした。ちょっと心変わりの記であります。

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コメント

所詮小舟なので、荒れた海には出ないですから、荒天に強いっていうのはそりゃあ強い方が良いですが、それが有効になるのは逃げ帰るときですね。

僕の船はFW23というUF23の廉価版みたいのでした。

一人で釣りをするというのが目的でしたから、いかに操船しながら釣りやすいかに焦点を絞りました。和船はコンソールが後ろ過ぎるのと当時は思ったんです。それと和船は洒落たマリーナでは浮く(^^;)。

何人かでしゃべりながら楽しむなら絶対和船です。ルックスはどちらが良いとも言えませんが、すくなくとも和船にチャラさはありません(^^;)。

しんさん

いや、もうはっきりいってもらっていいですよ。
ルックスで和船の方がいい、なんというのは、相当な手練れかへそ曲がりでしょう^^;。

私も、この船の隣にあったジョイフィッシャー23HT Ltd.に、ぐらぐらしてしまいました。
23フィートのこのクラスって、必要なサイズに必要なものがきちんと織り込まれていて、
デザインも間延びしていなくて、いいですね。

FW23カディも、デザインのいい船ですね。

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