相撲とりは相撲とり
力士65人全員解雇というわけにもいかないので、日本相撲協会は過去5年間に賭博に関与したと自ら申告した力士について、厳重注意でとどめる方針なのだそうだ。暴力団の賭場でやったとか、ノミ行為に関与したとかという話であれば、全員解雇というよりも全員逮捕だろうから、どうも仲間内の賭け事がという話らしい。
例によって相撲協会の身内に甘い体質が批判されているわけだけれど...。
相撲界というものは、異形の男たちをひとつところに集めて、ごく若いうちから相撲以外には何のトリエもなくなるような教育を施し、一人では表を歩けないような髪型と服装をさせ、ニホン古来の、やはりそれなりに意味のある伝統なり様式なりを伝えていくものなのだから、身内に甘いのは当然である。親方も含めて、ほかに行き場のない男たちが集まっているのだから。
そもそも平均寿命が15歳も縮まり、ほぼツブシのきかない人生を歩むことを覚悟の上で、相撲とりになろうかと決意した時点で、もはやあの人たちは異世界の人間なのだと思う。
じゃあ、力士なら賭博に手を染めていいのか。いいに決まっているのだ。賭け麻雀ならおれもやるが、それで謹慎したことはないし、誰かが謹慎したという話も聞いたことがない。あの狭い世界に住み、ほかの世界を知らない男たちが、身内で賭け事に精を出すなんというのは、ほほえましくさえあるではないか。2升、3升という酒を飲み、電話1本でタニマチから200万、300万というお金をせびって「ごっちゃんです」といえばすむ人たちですぞ。はなから普通のヒトではないのだ。
異世界に住む、異形の者たちが、尻を出した裸でいるのを公共の放送で流すほどの文化的な深みや寛容さをもつニホン人が、いざ何かコトがあると自分たちですら守れないような厳格な尺度でもって彼らを裁くというのは、なんという不寛容なのだ。子供の教育に悪いという向きもあるが、お門違いというもので、プロ野球選手や相撲とりやサッカー選手が、親が望むところの子供の手本になるわけがないではないか。大体、教育というものは親がするもので、相撲とりがするものではない。
それでは、稽古後の昼寝から覚めて、ちゃんこを待つ夏の夕暮れなどに、力士が3、4人で部屋に集まり、カルピスを飲んで任天堂wiiでもやっていれば満足なのか。そんなことで朝青龍や白鵬に勝てるか笑。
ついでにいうと、そんな狭い世界で顔をつきあわせて生きている男たちの間で、八百長がないということ自体が、あり得ないことだろう。過去のデータを調べれば、「千秋楽を7勝7敗で迎えた力士が8勝6敗で迎えた力士と対戦した勝率」がわかるはずだが、おそらく途方もない勝率になっているはずだ。
それでいいのである。たかが、ひとつの勝ち負けくらいで人生を棒に振りかねない状況に「仲間」が陥れば、なんとかして救おうとする者が出てくるのも、あの世界の人情というものだろう。八百長があることを確認したわけではない。そうであってもおかしくないし、そうであっても別にかまわない、とおれは思う。という話である。
相撲の巡業の会場というものは、何かこの世のものではないような多幸感にみちている。土俵の脇でパンダ座りをして仲間と何か話している力士、「鉄砲禁止」と貼り紙のあるぐらぐらの柱に、やっぱり鉄砲を続けている力士。高見盛の入場を見よ。客はみな、「あーーー」とかいって阿呆のごとく口をあけ、家族の前では見せたこともない幸福な顔をするではないか。
結局、あれが相撲なるもののひとつの本質なのである。ヨーロッパでF1やカードゲームがスポーツであるというくらいの意味では、たしかにスポーツではあるけれど、純粋な競技などではないし、過去にそうであったこともないだろう。また、あの客の多幸感の前では、そんなものはたいして意味のないことだ。
相撲取りは大酒を飲み、女にもて、仲間に星を譲り、バクチもやり、タニマチにごっちゃんして、その相撲以外では使い途のない人生を、華やかに土俵で輝かせればいい。そうでない者もいるだろうけれど、それはそれでもいい。
いずれにしても、多くの人々の口をぽかんとあけさせ、春の縁側にいるような幸福な気分に誘い、そして、いつのまにかいなくなるものなのだ。
コメント
そりゃそうですね。(^^)
マスコミがこぞって批判する姿もおぞましく思います。
元々がヤクザな世界なのですから、極道と付き合ったって
なんらおかしくは無いとは思いますがね。
ますます相撲が面白くなくなるかも。^^;
Posted by サルモサラー at 2010年6月16日 11:23
サルモサラーさん
すみません。RESが遅れました^^;。
書いた手前、成り行きを見守っているところですが、
暴力団(イコール極道とは、ちょっとニュアンスがちがう場合もあるけど)が
からんでくるとすると、大量解雇もあるのかなと。
そこをとぼけて、なんとかするのが日本相撲協会なのですけど、
世間が注視している以上は、警察もなあなあにはなりにくいでしょうし。
でも、おっしゃる通り、最近のマスコミは、こんなのばっかりですね。
Posted by JUN at 2010年6月18日 02:16
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