2010年4月 9日

映画>スパルタンX

『スパルタンX』(サモ・ハン・キンポー監督/1984)。

この作品を観ていて、アクション映画というのは、もともとコメディ映画なんである。ということに気づいた。ハロルド・ロイドの『要心無用(1923)』がそうであるし、へたをするとバスター・キートンのデビュー作とされる『ファッティとキートンのおかしな肉屋(1917)』の頃から、そうであったのかもしれない。

ロイドは命綱もなしで高層ビルをよじのぼり、ある日、指を失い、キートンはあの無表情のままで走る列車の屋根を疾走し、ある日、首の骨を折った(自然治癒したらしい)。そしてスクリーンのこちら側の観客は、彼らの命知らずのコメディに腹を抱えて笑いころげた。

カンフー映画は、一説によると加山雄三主演の『姿三四郎(1965)』の甚大な影響のもとに、日本が柔道ならこちらはカンフーだと60年代にジャンルとして確立。その流れの上でブルース・リーの『燃えよドラゴン(1973)』と続くわけで、これはコメディの入り込む余地はなかった。

そんなカンフー映画が、リーの死で行き詰まった70年代中頃以降、ジャッキー・チェンとサモ・ハン・キンポーの二人によって、コメディとしての命を吹き込まれた。アクション映画としては、ようやく先祖の教えを思い出したということになるのだろう。

笑いにもいろいろあるけれど、あまりに非常識な体の動き、体を張ったアクション、ありえない展開を目の当たりにした時、人は笑うしかない。反射的に、肉体の反応として笑うしかなくなることがある。ロイドやキートンの笑いはそれで、だから、彼らの笑いは90年後の今に続く。そしてジャッキー・チェンは、『蛇拳(1978)』以来、ずっとそれをやろうとしている。彼のカンフーが凄いという以上に、それは凄いことのように思う。

懐かしいベニー・ユキーデとの対決シーン。あの動きをみると、あの時代、彼と戦った空手出身の日本人キックボクサーが、なかなか勝てなかったのも仕方ないかなと思う。あの頃はまだ、現在のK-1にみられるようなパンチの重要性が、あまり認識されていなかった。ユキーデのパンチの打ち方は、当時のキックボクサーのものとはかけ離れていた。あんなに低い重心から爆発的なパンチを打てる人は、本職のボクサーにも多くはない。

主役の三人は、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポー。いずれも同じ京劇学校の同期生らしいが、京劇とカンフーがどのように結びついているのかは、よくわからない。舞台はバルセロナなのだが、なぜバルセロナなのかは、もっとわからない。面白いから、これでいいのだ。

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