2010年4月19日

MEETS THE RHYTHM SECTION

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アート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズムセクション』は、ここ15年ほど、私のオーディオチェック用のリファレンスになっていた音源だ。57年の録音だから、たとえば現代のシェフィールド・ラボや日本のオーディオ・ラボなどに比べると、そんなにレンジが広いわけでもないし、そうめちゃくちゃに高音質というわけでもないのだけれど、節度の良い録音であり、楽曲はシンプルで何より演奏がいいので、日常でもよく聴く。

いわば耳になじんでいるので、チェック用にこれを使っていた。そういう人は多くて、ジャズ系のオーディオファンでこれを持っていない人を探す方がむずかしいくらいだろうと思う。で、何気にamazonを眺めていたら、昨年3月にこれのニューバージョンが出ていたのだが、見たこともないジャケットでちょっと驚いた。エッセンシャル・ジャズ・クラシック盤。音質が向上しているとのことで、注文。

ちなみに、いつものやつはこれ↓。いかにも格調高いジャケットである。
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今日、エッセンシャル盤が届いたのでさっそくかけてみたのだが、「あらまー」というくらいちがう。まず同じボリューム位置で音圧が全然大きい。3~5dbくらいはちがうのではないか。一聴して余韻感が豊かなので、情報量が多いといってもいいのだろう。

そして、いわゆる情報量が多い音源にありがちな、上品さ、おとなしさというものにも無縁で、むしろ音が前に出てくる。そしてこれは耳のせいだかわからないけれど、左チャンネルのサックスが少しセンター寄りに定位するようだ。リマスターではないはずなので、左右バランスをいじることはないと思うのだけど。とりあえず今後のオーディオチェック用は、こちらになりそうだ。

ちなみに、この音源は発表後50年を経過して著作権が消失。ジャズのメインストリームだった50年代の音源は、もうすべてが50年経っているので、無関係レーベルからかつての名盤が続々と出てくるのだろう。ただコピーしただけではつまらないので、より高音質化を狙うというこの盤のようなことが起こってくるわけで、これは歓迎すべきことだろうと思う。

長岡鉄男師は「名曲・名演奏に名録音なし」と言った。主にクラシックの分野の話なのだが、要は名曲・名演奏なら録音などどうでも良くても売れる。一方、マイナー曲でマイナーな演奏家だと、録音くらい良くなくては仕方ないので、一所懸命、録音をやる。今後出てくる著作権切れジャズは、名曲・名演奏に名録音(正確には高音質化か)が三拍子揃う可能性がある。しかも、24bit盤などよりはるかに安い。これは目を離せないことになってきた。

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余談だけれど、昨夜の『市民ケーン』の唯一の難点は画質の悪さだった。せっかくのパンフォーカスも、あんなにフォーカスがゆるんでいるのでは仕方ない。オリジナルネガが消失しているらしいのだが、アメリカのワーナー盤は、なんとか修復して素晴らしい画質だという。著作権切れ映画も、ただ500円で売るばかりではなくて、片端から高画質化してリリースするくらいの志というか、映画愛のある会社が出てきてもいいと思う。

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