2009年11月23日

ひさびさに映画

天気は安定しないし波も高めだしということで、この連休も船を出すにいたらず。大体、土曜日の取材を家族のインフルエンザを理由に「早退け」した手前、そうそう遊びにも行っていられない。

初冬の雨の日に家にいて、暗くなってくると映画でも観るしかないのだが、これがまたなかなかスイッチが入らないのですね。最後にここに映画のことを書いたのは9月20日で、その後も何か観たような気がするのだけど、思い出せない。ああ、20世紀少年を映画館に観に行ったのか。あれは、1から3にかけて尻すぼみになっていく映画だった。

とりあえずリハビリに、昨夜は「タカダワタル的」を観た。リアスピーカーのサラウンドがよく効いて、ほんとにライブ会場にいるような、というか、こんなに音のいいライブ会場なんかないんじゃないかと思う。特に、こういう小編成のフォーク系だとスケール感の点でも遜色ない。

この映画は、高田渡を追っかけたドキュメントというよりも、タカダワタル的という名のDVDアルバムといった方がいいくらいのものなのだけど、何度も見かえすことができる質の良さがあって、大当たりだった。

ふんふんと気持ちよく観ていって、ラスト前の「ブラザー軒」でやっぱり大泣きする。そのまんま、エンディングの「私の青空」だものな。あの歌は、もはや高田渡を送る歌になっている気がする。明るく晴れわたった、みんなの鎮魂の歌。おれの葬式でもこれを流すかな。

妙に携帯メールがたくさん届く日で(きわめて重要なメールもあるのだが)、いろいろやりとりをしながら、「幕末太陽傳」を観る。「品川つくりゃ、下司ばったことをいうようだが、食い物がうめえからな」の、居残り佐平次の品川である。冒頭、現代の品川というものが映されるのだが、昭和32年の現代であるからして、今の無味乾燥で冷たい品川とはちがう。

なんとも雑然として、海の匂いがしてきそうないい街だったのだ。フランキー堺の神がかり的な名演。石原裕次郎の大根も、とてもよい。男ぶりがいいのだ。しばらく映画を観ていなかったので、こういう心のふるさとのような映画を観て、勢いをつけようという心理が働いた。人間が単純なので、心理も単純なものだ。

心のふるさとの映画は、ほかにもいくつかあって、「けんかえれじい」「独立愚連隊」「三文役者」「拝啓天皇陛下様」なんてところ。どうも、こういう日本の古いB級映画に名作が多くて困る。あまり人が観ていないから、話のネタにもできない。


追記:無味乾燥で冷たい品川、とはJR品川駅周辺をイメージして書いたのだが、東海道品川宿があったのは現在の京急北品川駅のふきんだったらしい。昭和32年というと赤線廃止の直前であり、品川特飲街もこの翌年に消えた。消えゆく街の姿から、さらにとっくの昔に消えた街の姿をしのぼうという冒頭部なのだった。

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コメント

 以前はリオ・ブラボ-の話でしたか、西部劇の話題に書き込みしました。

 戦後すぐの邦画ですか、趣味が広いのですね。知らないより色々知っている方が幸せですよね。

いやー、私は長いこと映画音痴で、数年前からいろいろ見始めたところです。

あまりジャンルにも時代にもこだわりなく観ていったら、
たまたま、こういうのが好きになったというわけで。
まあ、50年代というのは日本映画の黄金期みたいなので、
いい作品が残ったのかなとは思います。

あと、昔のものには、映画のタイムマシン的なところが
感じられるやつがあって、面白いですね。
街の風景、人たちの服や車、歩き方まで、
映画として再現したのではない、そのままの姿が残っていたりして。

「タカダワタル的」僕も永久保存版のDVDとなっています。
あんなに暖かいライブができたらなあ・・と、つらつら思うのであります。
酒飲んでライブに出演して許されるのは高田渡くらいかもしれませんが。

ライブメンバーで、バイオリンやギター、マンドリンなどを弾いている佐久間順平氏は、最高のバイプレーヤーですね。
僕も自分の音楽仲間の間では、あんな役割を担えるよう頑張っております^^;

ステージで飲むのは憂歌団で見慣れていましたので、
高田渡の飲みっぷりは、むしろ上品に感じました^^;。
憂歌団の木村は、客がつぐ酒を断らない人でしたし^^;。

「タカダワタル的」は、中川イサトがギター弾いてたり、
坂田明がサックス吹いてたり、けっこうサプライズがありました。
佐久間順平という人を知ったのは、あれが初めてでしたけど、
高田渡とは、だいぶ昔から一緒にやっているみたいですね。

晩年の高田渡は、仙人というか仏様というか、そんな感じになってますね^^;すべてを包み、許してしまうような笑顔。

http://www.youtube.com/watch?v=slSfx1De-D4&feature=related

佐久間順平氏は、長年一緒にやっていて、高田渡のギターも保管しているようですね。
たまにNHK・BSでやってる「なつかしのフォーク特集」などで「神田川」や「精霊流し」のバイオリン弾いたりしてます^^;

音楽プロデューサーとしても活躍していて、僕の好きなハンバートハンバートなどの若手のプロデュースも手がけているようですね。
こういう人がいるから、日本のアコースティック音楽は熟成していくのだろうなと思います。

ギタープレイヤーとしての高田渡は、日本のミシシッピ・ジョン・ハートだったんだと、
「タカダワタル的」を観て思いました。

考えてみると、ステファン・グロスマンなんかが、約30年遅れて、
ようやく最近、日本で評価されているわけだけど、
高田渡が単に昔のカントリーブルースが好きというだけだったら、
ステファン・グロスマンになっていたかもしれないですね。
そうすると、内田トキオなんかは出番がなかった。

でも、日本にカントリーブルースを紹介するというような、
そういうフォロワーとしての仕事は面倒でもあるし、
何よりも自身が歌うたいでもあるしで、幸い、高田渡は、
フォロワーで終わらなくてすんだ。

紹介してもらった「生活の柄」など、音楽そのものが
どの国の誰にも似ていないわけで、これはすごいことであります。

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