2009年8月28日

衆議院選挙宮崎1区

少し選挙のことも書いておこう。

私の住む宮崎1区は、青森1区、栃木3区とともに自民党公認候補がいない、かなり特殊な状況となっている。それも中山成彬元国交相、上杉光弘元自治相という大物がいるのに、である。

70年代後半から、宮崎に連綿と続く保守政治家同士の対立の図式、およびその系譜、といったような政治状況についての説明は省くが、要するに昨年、日教組をめぐる不適切な発言(日教組が強いところは学力が低い、等)等で国交相就任後、数日で辞任に追い込まれた中山氏が、責任をとって次期衆院選の不出馬を表明し、それを受けて自民党宮崎県連は公募によって公認候補を募集、数人の候補者の中から上杉氏を選んで、党本部へ推薦した。

ところが公示間近になって中山氏が前言を翻して、立候補を表明。自身が支部長を務める宮崎1区支部は中山氏を独自に推薦し、また最大派閥町村派事務総長という力を背景に、県連を飛び越えて党本部に自分を公認にするように求めた。選挙区→県連→党本部という流れからいえば、党本部は上杉氏を公認するだろうと考えられたのだが、党本部は「しこりをおそれて」両者とも公認せず。県連は怒って上杉氏を「県連公認」とした。

ここに、宮崎県自民党は分裂選挙を戦うことになったわけなのだが、実は前回の知事選でも同じ動きがあり、県内保守が推し、ほぼ本命といわれた元経産省官僚・持永哲志氏に対して、中山氏は元林野庁長官の川村秀三郎氏を擁立。これによって票が割れたことで、選挙後半に勢いを伸ばしてきたそのまんま東氏が当選した。

告示時点のそのまんま東候補の評価というのは、地盤もないため主戦級には遠かった。前知事が逮捕されるという異常事態にあって、ぼろぼろになった県政を立て直す、本格派の知事が待望されていた中で、なんでそういう引っかき回すようなことをするのだ、という受け止められ方が大半だった。

選挙戦中盤まで、持永氏対川村氏の保守分裂選挙として、それなりの盛り上がりの中で進んでいたのだが、候補者全員が出席する討論会で東氏が、あざやかな討論をしたあの日が、分水嶺になった。あの短い期間の中で、見事に状況をひっくり返してしまった。もちろん保守政治への不信が頂点に達していたこともあったのだが、単にその受け皿になったというだけではない。

その時の得票は1位そのまんま東氏・266807票、2位川村秀三郎氏・195124票、3位持永哲志氏・120825票。東氏の急追と、「地方におけるさらに地方の反乱、つまり田舎における超田舎の反乱(具体的には市町村単位の、そのまた区域単位の、従来自民票が計算できたはずのところで、相当数が投票箱の前まで来て、静かに反乱を起こし、東氏に投票した)」があったとはいえ、保守分裂がなければ東国原英夫知事の誕生はなかったかもしれない。少なくとも票の計算ではそうなる。

で、今回、その川村氏は民主の推薦を受けて(公認ではない)、立候補。分裂した自民の隙をつくような形で、健闘が伝えられている。おそらく、ややリードという状況ではないかと思われる。いや、普通に考えると負ける要素がない。

前回05選挙の総票数は約205000(投票率63%)、今回、投票率が同じとして、川村氏の民主・社民系の基礎票が8万あると思われるので、票の4割を確保。しかもこれは、「風」の影響を考慮していない。自民両氏が健闘したとして、だいたい得票比率は4:3:2:1くらいか。その他、「風」の影響、公認争いのどたばたの影響を考えると、さらにその差は開く。自民系候補を一本化できていたら、と自民党関係者は地団駄を踏んでいるのではないか。

自民党員ではないので、宮崎の自民党が一枚岩になれないことを嘆くのでもないのだが、自分たちで決めたルールくらい、守ったらどうだろうとは思う。あまりに露骨な権力争いは、どっちがどう、という以前に、党そのものへの、また政治状況そのものへの不信につながる。大体、今の状況を、うまく子供に説明できない。ほんとうのことなど、言えはしない。

こういう保守分裂選挙は、ここ10年ほど(あるいはもっと)続いているのだが、それも保守(自民)王国であったからこそできた権力闘争だった。自民退潮が確実となっても、それがなお続くというのは、やはり異常である。すでに止め方、止まり方がわからなくなっているのかもしれない。

8年ほど前に、ある選挙に関わった時に、盤石のはずの自民党型組織選挙に、ひんやりとした微風が吹いているのに気づいた。各種団体の推薦状が何百枚集まろうと、神社のお札ほどの頼りにもならないことを知ったのは、その次のこと。そして2年前、うっかり「引きしめ」という言葉(禁句であった)を口走って、罰が当ったようにある候補者が落選。

8年前の冷たい微風が、今、どんな風になっているかはご存じの通り。自民党は田舎にとって必要な政党である。大勝してほしいとは思わないが、大敗してしまっても困るのだ。ところが小選挙区制だから、そうはいかない。得票数以上に議席数の差がつくということが起こるはずだ。

勝ちすぎると、無茶をする。ほどほどに勝ち、ほどほどに負ける。そういう政権交代の仕組みを作ることが、これから数年間の大事な課題になるように思う。

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