2009年8月28日

自民虐待選挙

そこまでしなくても、というのが最近伝えられる選挙状況についての感想である。

たしかに、安倍・福田・麻生と三代の内閣が総選挙を経ることなく生まれ、前者二代はいずれもさしたる理由もないように見える状況の中で総辞職した。政権担当能力がないといわれても仕方のない出来事ではあったし、この三代の内閣の支持率は下がり続け、内閣の正統性を民意に問う総選挙が待ち望まれたのは、議会制民主主義の原則からいって当然のことではある。

が、それにしても、である。

今、日本を覆っている「ざまをみろ」という空気がいやである。それが、あっという間に醸成されたのも、戦前、この国に起こったいくつかの例を連想して寒い。世の中の閉塞感や、経済的な行き詰まりや、先の見えなさ、そういった諸々の憤懣のはけ口が、自民党になっている。それは政策がどうとか、国づくりのビジョンがどうとかいう話をとっくに超えてしまって、要するに自民党の偉い人が落選して涙目になるのを見たい、という虐待に近い感覚ではないのだろうかと思う。

私にしても、民主300議席、自民100議席などという数字を最初に見た時は、心のどこかに風が抜けていくような感覚があった。だが、ほんとうにそこまでしなくてはならないことなのか。

たしかに、そういう目に遭ってしかるべき人はいる。だが、少なくとも麻生総理その人ではなかろう。彼の何が、それほどまでに国民にそっぽを向かれているのか。政策でもなく、人間性でも、たぶんない。漢字の読み違えをすることも、時に変なことを口走ることも、決定的な要因ではなかろう。決定的な理由は、今、この瞬間に、自民党の総裁であり、総理大臣であったということなのだ。

そして、総選挙期間中であるというのに、次期総裁として舛添厚生大臣の名が上がり、その名を連呼して選挙を乗り切ろうなどという、やぶれかぶれな話も伝わってくる。だが、そんなことでこの風はやみはしない。どころか、舛添氏、小池氏などという政治家としてはビギナーの名を持ち出さなくてはならない、自民党のお蔵のさびしさを見透かされてすらいて、そのまた責任をとらされるのが麻生総理ということになる。

思えば、中選挙区制というのは、それなりに賢い知恵ではあった。もともとは多様性も複雑さも持っているくせに、こと物事が政治とか外交とかいう話になると、世の中には、正と負の二つしかないと、すぐに考えることができる単純さをもつ(それは愚かということである)、近年のニホン人にとって、二大政党制も小選挙区制も、あまりに似合いすぎている。制度的に、どこかクッションになるもの、頭を冷やす時間を稼ぐ何かが必要だろう。

福岡7区の古賀誠元運輸相が苦戦だという。ライバル候補は自身の元秘書で、小沢一郎氏がぶつけてきたのだという。むごいことをするものだと思う。

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コメント

うちは千葉7区なのですが、民主の元キャバクラ嬢が・・と思ったら福島県に刺客で鞍替え立候補だそうです。

地元では「キャバクラで働いていました!!」って街頭演説を一度聞いただけです。

他方自民は高学歴(何故か7区では弱い)に県知事はのりPの事務所の取締役。

ほんと大丈夫なのかな??

太田さん、福島でも健闘しているようですね。

東大を出て官僚になり、業界や地方の利益代表として政治家にというコース、あるいは政治家秘書になって酸いも甘いも体験して、人物が認められて出馬というコース、もしくは地方議会や農業などの各種団体からたたき上げて、というのが、日本の保守政治家への主な道だったわけですが、今、個人の発信力があれば、チャンスは多くないながらも、そこそこ勝負できるようになったのかもしれません。

 今回の選挙は民主でなければならない、と言う人が多かったわけではなく、’反自民’になってしまった人が多かった為でしょう。

 実際世論調査では、次は自民に戻る(!)なんていう人が60%以上を占めたそうです。こういう浮動票が反自民の大勢を占めていたのでしょうね。

次回自民が60%ですか。そうやって、バランスをとっていくのかもしれませんね。民主政権がスタートしましたが、こういう本格的な政権交代は戦後なかったことなので、これがモデルケースになるのでしょう。ちょっとみんな、はらはらどきどきといった感じですね。

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