2009年5月 4日

映画の重低音について

最近の、といっても、どのくらい最近なのかシカとはわからないのだが、とにかく最近の映画には重低音成分が大量に含まれている。

この重低音の定義がクセモノで、ピュアオーディオ的には大体80hz~120hzくらいのことを指すような気がする。シスコンなどで「重低音がすげー」という時は、もっとずっと上の帯域、大体120~200hzくらいだろうか。ロックなどを聴いていて、ずんずんくるのが、そのくらいだろう。

オーディオ的に再生の目標になるのが、一応40~50hzで、それ以下は超低音という言い方をすることもある。超低音を簡単に聴けるのが、オルガンの低い方で、こちらは20hzのCD再生限界ぎりぎりまで、楽音として出てくる。

自分の装置で聴いてみると、たしかに25hz前後というオルガン音が聞こえるのだが、これが倍音成分なんだかどうなんだか、自分の耳だけで判断するのはむずかしい。何しろ、めったに聴けない音なのだから、体験が足りないのだ。

ただ、スーパースワンの再生限界はどうがんばっても40hzだから、25hzなど出ているはずはないのだが、オルガンの最低音に近いところが音として認識できることは確かだ。だから倍音なんだろうが、では50hzで聞こえるあの音は何だという話になる。

ジェット機の離陸の音源で、うおおおおおおーんんんん、といって部屋全体が震えるようなCDがあるけれど、このへんも、スピーカーの限界の40hzふきんだとすると、40hzでも耳ではなく体で聴くといった感じになってくるんだろう。

で、最近の映画なのだが、この重低音だか超低音だかが、やたらに入っているのだ。サウンドデザインをする時に、とにかくスキあらば低い方を聴かせてやれといった意図が見える。

昔から、戦争の時に太鼓を叩くように、低音というのは人の心をひとつにまとめる、あるいは狂わせる作用があるから、映画の音響として、せっかく使えるようになった低音を使うというのはわかるのだけれど、どうみても使いすぎである。

ドアの開閉、車の疾走、発砲、爆発、突進、パンチに投げ技、なんでもかんでも大音量の低音で色づけされているので、こちらの耳が特別に悪いということもあるのだけど、肉体的につらい。引き込まれるよりも、拒否反応を感じてしまうことがある。

モノゴトはめりはりが大事である。おおざっぱにいって、のべつまくなしに大低音が入っているアクション映画というのは、そのサウンドデザインの仕事ぶりだけで、二流だとわかるといっていい。もっとも、そのデンでいくと、たいていの映画は二流になってしまう。

映画館の音響が革命的に向上した時代だから、ひとつの過渡期でもあろうけれど、早いところ一山越して、効くべきところに効く、センスのいい音響に落ち着いてほしいと思う。

まあ、たまには、音のシャワーを浴びるような映画があってもいいけどね。

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