沈む国にしてはいけない
こんなに長いこと書かないでいると、風邪でもひいたのかなと思ってくれる人が、世に一人くらいいるのだろうか。おあいにくさま、元気である。
でも、ワタシは新年早々、しかも元旦の朝に、少々ヘコんだ。2008年1月1日、日経の一面、「沈む国」とかなんとかいうタイトルがついていたその記事では、ロンドンのタクシー初乗り900円台、外食一回あたり6000円台、などという英国の物価事情が並んでいた。
イギリスの物価が高騰しているのではない。 ニホンのエンが弱くなったのだ。その理由は、大きく分ければ、外需依存の経済構造に甘んじてきたため、円安を許容する甘い体質が身にしみてしまったことと、対ドルばかりに目を奪われているうちに、ドルの凋落とともにエンが道連れに心中してしまったことの二つしかない。
内需掘り起こしの立ち後れが、ここ数年の非正規雇用の増大に伴う所得水準の低下(二極化というけれど、まやかしであって、総体としては低下だ)によって決定的になり、それがまたグローバリズムの名の下に行われたのだから、皮肉というしかない。誰かが、何かを誤った。あるいは、誤魔化したということなのだろう。
日経では、このシリーズの記事を正月の数日間にわたって掲載し、たとえばユーロに対する円の弱さ、ロシアとニホンの立場がすでに逆転していることなどを、これでもかとばかりに訴求し、新年からニホンの政治・経済人の目を覚まさせようとした。ワタシは政治・経済人ではないので、目は覚めなかったけれど、そのかわり、だいぶヘコんだ。パンと魚の揚げたのとコーヒーがワンプレートに乗っていて、6000円するとしたら、やはり自国の弱さを思わざるを得ない。
と思えば、今夜はなんとかいう番組で、なんとかいう女の子がタイに遊びに行き、「5000円、使い切れるかしら」なんていっている。こういう、自国民の優越感を刺激する番組だけではよくない。ロンドンやドバイに住んでみて、ニホン人一ヶ月分の給料で、その国の平均的な生活をした時に、何日生きられるか、なんていう番組も見てみたいと思う。
あるいは、物価が安いことになっていたスペインやオーストラリアで、ニホン人はすでに年金では暮していけないほどの物価水準になっていることを、生活感の中で体験する番組も見てみたい。ロシアもしかり、韓国もしかり。中国の一部もしかり。
ニホンの社会の、あらゆる場面で目にする内向きの構造が、この国を駄目にしつつある。それは、黒船の時代からなかなか変わらない。
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