SONY TA-F555ESL 来る
白男川さんのところから、 SONY TA-F555ESLが送られてきた。10年以上前、SONYがこれでもかの物量投入作戦で作ったプリメインアンプで、イワオのごときジブラルタル・シャーシが特徴。重さも30キロほどある。
これまで使っていたアンプも、やはり白男川さんにもらったもので、天才金田明彦氏が70年代に設計したA級30Wだったのだが、これが何かの理由で過電流が流れてトランスが断線。
こうなると手も足も出ないので、白男川さんに修理を頼んだところ、タンゴはすでにトランスを作っておらず、ノグチに同等品を注文するも在庫切れ。職人さんが、わざわざコイルを巻いて作ってくれたのだそうだ。
そんなこんなで無事に修理も終わり、一件落着めでたしめでたしだったのだが、白男川さんが自宅のALTEC 604-8Hで鳴らしてみたところ、これがぶっとぶような音がしたらしい。「ALTEC をこんなにうまく鳴らすアンプはほかにないかもしれない。送る前に1週間ほど聴かせて」といってこられた。
もともとタダでいただいたものであるし、金田アンプと604-8Hが恋仲になってしまったのなら仕方がない。どうぞそちらでお使いくださいということになり、それじゃとりあえず手元のSONYを送るから、ということで、555ESLがうんとこしょといって宅配便で届いたわけだ。
実は、金田アンプの前は、こいつの弟分である333ESRを使っていた。なかなかいいアンプだと思っていたのだが、金田アンプと比べれば大人と子供ほどの差があった。555シリーズは、もちろん歴史に残るような名機であり、ハイコストパフォーマンス機でもあるので(このアンプを自作しようと思えば部品代だけで20マンではきかない)、期待していたのだが、やはり残念ながら大人と中学生くらいのちがいがある。
ぼくの左耳はメニエール症候群によって、ほぼオーディオ的にはわやになっているのだが、それでもどうしようもない差が聴こえてしまう。一言でいうと音楽がこっちに飛んでこない。音が薄いのだ。バイオリンが電子楽器のように聴こえてしまうし、音の実在感とか躍動感が全然ちがう。
金田アンプは音像のにじみがなく、宙空にぴたりと音が立ち上がる。鳴るべき時には鳴り、止まるべき時に止まる。スピーカーの振動版に惰性とか気ままな動きを許さない感じで、かといって窮屈な感じはまったくなく、のびのびと音が躍動する。そんな音の記憶を、耳がはっきりと覚えていた。
555ESLはスーパースワンの居場所から離れないような音の出方をするのだが、金田アンプはスピーカーがそこにないかのような鳴り方をしていた。長岡鉄男風にいえば、「音場は広大無辺で前後左右上下に広がる。音離れの良さは前代未聞」というところ。いや、それに慣れてしまっていたので、そんなに悪いものではないはずの555ESLの鳴り方に違和感を覚えるのだろう。一度進んでしまったものは元には戻れないのだ。やはりオーディオは怖い世界だと思う。
こうなるともう、最新設計の金田アンプを...。って話になるのだろうか。
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