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『カルメン故郷に帰る』(木下恵介監督/1951)-宮崎映画祭
日本初のカラー作品として、その名だけは小学生の頃から知っていた。家にあった百科事典に写真が載っていたからだ。
その写真には、鮮やかな緑の草原で若い女の人が踊っている姿が映っていたのだが、映画の方は、退色したのかもともとそういう色調なのだか、どうも草原は褐色であり、全体に黄ばんで見えた。それは、まあどうでもよいけれど。
浅間山と草原と小さな木造小学校があるきりの、なーんにもない北軽井沢の牧場で育った娘・きんが、ストリッパー、リリイ・カルメンとして故郷に錦を飾ろうと帰ってくる。小屋の改築のために六日間の休みが与えられての帰郷。
リリイは、子供の頃に牛に蹴飛ばされてから、どうも少し頭があったかくなったと父親は語るのだが、もともと脳天気な性格なのだろう。ストリップを芸術だという確信をもっていて(特に異論はないけど)、みずからを芸術家と信じている。
失恋した友人と二人、これまた木造のぼろぼろの電車に乗って帰ってくるわけなのだが、そのイデタチと言動は当然のことながら、周囲に軋轢と困惑をもたらす。父親は寝込み、きまじめ一方の校長先生(笠智衆)は嘆き、地元を仕切る実業家は、興業を打ってひと儲けをたくらむ。
前年、『二十四の瞳』で先生役をやった、あの高峰秀子が踊るわ走るわパンツは見せるわの活躍で、さぞ世間はひったまげたことだろうと思う。
全体に、とてもよくできたドタバタコメディ。挿入歌の「そばの花咲く」の哀調が映画に彩りを添える。何より、北軽井沢の自然の美しさ。木造校舎の前でダンスを踊る小学生たちの、モンペありセーラー服ありのいでたち。ニホンに、当たり前にあった情景が、かくも懐かしく美しいのは、映画が時間の流れとともに獲得した魅力なのだろう。これはもう一度、見ると思う。