映画>竜二

『竜二』(川島透監督/1983)。
久留米でタウン誌を作っていた1984年頃、先輩の編集長が入れ込んでこの映画の記事を書いていた。すげえ面構えの男だなと思った主演・脚本の金子正次が、映画の公開直後に亡くなっていたことも、その時の記事で知った。
記事を書くくらいだから、その頃、久留米で上映されたのだろう。気になっていた映画ではあったけれど、映画に興味があるない以前に、睡眠時間の確保にやっとの駆け出しの身であってみれば、劇場で過ごす二時間をそう簡単に作ることができなかった。あの頃、二時間あれば、たぶん寝ていただろうと思う。大体、ポケットベルが鳴って、会社に電話をかける10円がないこともあったくらい、経済的にも逼迫していたわけで。
そんなわけで、観てもいないのに、妙に記憶に残っていた映画。今回、ようやく観るにあたり、ちょっと襟を正すという感じになった。
画面が走り始めて、「おっ」というわくわく感があった。なんだか、自分の部屋が暗くなったのではなくて、ほんとに場末の、ほかに人のいない小さな映画館に迷い込んだような気にさせてくれた。これはなんなんだろうな。初めての経験であり。
さて、金子正次。この時、たぶん32歳か33歳。新宿のヤクザである。それも絵に描いたような暴力的なヤクザであって、なおかつ可愛い。それがある日、カタギになろうとして酒屋で働き始め、女房・子供とつつましやかな暮らしを始めるんだけど…。
主人公はヤクザであるにしても、青春映画とすら呼びたい気がした。行き場のないのが青春ってもんだったろう、たしか。
場面転換、ストーリーの運びともにスピーディで、クール。ちょっとそこ、普通にはわかんねえよというところもあるにはあったけれど、それよりも運びのリズム感の方が気持ちいいので仕方ない。
この映画、たぶんもう一度観ると思う。いい映画だった。