映画>逃亡くそたわけ

『逃亡くそたわけ』(本橋圭太監督/2007)。
「もう、いやや。こげなとこにおるけん、精神病やら言われるとたい」
「そら、逆でしょう。病気だから、ここで治すんじゃない」
「こげな、プリズンのごたとこはいやや。逃げるばい」
ということで、男女二人、ルーチェに乗って福岡の病院を脱走し、九州縦断ロードムービーの旅に出るわけである。
昨日から開催されている宮崎映画祭の目玉の一本であり、上映は昨日と今日の二回だけ。初日には主演俳優が舞台挨拶まで行うという気の入れようであった。何しろ、今のところ「2007年10月公開(予定)」という映画である。ひょっとすると、公の場所ではこれがお披露目であったのかもしれない。
昨日、上映時間ぎりぎりくらいに出かけてみたら、会場がいっぱいで入れず、今日は開館30分前から並んで(のんきな者の多い一族の行動としては前代未聞であろうと思う)、係員の誘導に従って二列縦隊で会場に入り、どうにか観ることができた。
宮崎映画祭の会場である宮崎キネマ館には初めて入ったのだけど、もともとはファッションビルのテナントの一角であり、キャパは100くらい。映画館というよりも、何か昔の出張上映を思わせるような雰囲気だった。
冒頭、関係者の挨拶があったのだが(誘導してくれた当人だったが)、「こんなにいっぱいになったことは、過去にないです」とのこと。まあ、ぼくが行くくらいだから、いっぱいにもなるのだろう。
映画が始まってすぐに、スクリーンの小ささに気づく。あんまり「映画館で観ているぞ」といった感じがしない。自宅のプロジェクター視聴といい勝負か、むしろ自宅の方が距離が近い分、画面の迫力はあるかもしれない。
画質は、粗めのトーンで仕上げてあるので、解像度などで評価できるものではない。これがフィルムの味ということ。音は、負けた。音質では勝っているのだけど、何しろむこうは、映画館としては普通であるとしても、ドルビーSRD(AC-3)のマルチチャンネルだ。映画を観ていて、これはなんとしてもリアスピーカーとセンタースピーカーを作らんといかんなあ、と考えていた。
さて、映画の内容。いわゆるロードムービーなのだけど、そこらへんのロードムービーとちがっているのが、主人公が二人とも精神病であることだ。特に女(美波)の方がひどくて、四六時中、幻視と幻聴に苦しむ。それをこちらも体験するわけだけど、幻視の中に出てくるわけわかんない連中が、それなりに魅力的だった。
総体的にどうだ、となると、どうなんだろう。とにかく気持ち良く観られる映画ではあるし、美波のエキセントリックな役柄もいいし、編集のテクニカルな遊びも嫌みがなく、切れ味がよかった。普通以上の出来の映画であることは確か。ただ、こちらが九州在住だけに土地への思いもあり、反面、美波の博多弁が沖縄のイントネーションなのはどうにかならんかと思ったりもして、なかなか客観的には観られなかったかもしれない。
ついでにいうと、美波が福岡に住んでいた昔のお友達によく似ていた。やはり客観的な評価など無理だ。映画だからそれでいいのだ。