2011年11月 8日

映画>明治侠客伝三代目襲名

『明治侠客伝三代目襲名』(加藤泰監督/1965)。

私のような世代の人間には、タイトルを見ただけでは、何の映画だかさっぱりわからないのである。まあ、任侠映画だということはわかる。60年代のある時期に、やたらとこういう映画が作られたことも知っている。加藤泰監督は、『人生劇場』(1972)だけは観ていた。

いろいろ言わないで、とりあえず観てみる。

鶴田浩二、嵐寛寿郎、津川雅彦、藤純子、大木実、藤山寛美、丹波哲郎とくる。豪勢なキャストである。当たり前だが、みな若い。そしてなんだか、今の俳優にはあんまりないような勢いを感じる。これが、映画の時代の勢いというものなのかもしれない。

時代は明治の、おそらく後期。大阪のヤクザ一家である木屋辰二代目(嵐寛寿郎)は、これからはヤクザも変わらなくてはいけないと、賭場をやめてカタギの土建業になるべく、ヤクザ同士の争いから距離をおこうとするのだが、対抗勢力の殺し屋に暗殺されてしまう。

三代目を継いだ鶴田浩二は、二代目のボン(津川雅彦)に会社をそっくり渡して、自分は木屋辰の看板だけを受け継ぎ、神戸の港湾工事の監督に赴くのだが、その留守中に今度はボンが襲われ、あとは例によってドスを抱えて単身、敵地に乗り込んでいく...。

映画が大量生産されていた時代。この作品も18日間という、ありえないような制作日数で作られたのだが、今もって名作とされている。wikiによると、71年の別冊キネマ旬報で、任侠映画ベストワンになっているという。

とにかく話の筋がわかりやすく、キャラが立っている。誰が観ても面白い。これぞ娯楽映画である。そのかわり、カンヌにもなんとか賞にも縁はない。他社がどんどん現代劇で受けているのに、流れに乗り遅れた「時代劇の東映」が、新機軸として鶴田浩二を使って撮った『人生劇場飛車角』(1963年)、『博徒』(1964年)に続く、第三弾の任侠映画という位置づけなのかもしれない。

高倉健の『網走番外地シリーズ』も、この年に始まる。高倉健が70年安保世代・団塊の世代の大学生たちに熱く支持されたほどの時代とのリンクが、この頃の鶴田浩二にあったのかどうか、やはり私のような世代の人間にはわからない。

高倉健の任侠ものも、やはり観てみないとだなあと思う。

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