郷愁の不在
ひろすけさんのブログで紹介されていた1981年のサントリーのCF。彼は泣かせるといっていた。私も泣きはしないけれど、心の中に何か忘れていたものに気づいた気がした。
おそらくこの30年の間に、日本人が忘れてしまった最大のものは「郷愁」ではないかと思う。それは単に故郷を思う気持ちというのではなくて、何か心の中にある温かいもの、懐かしいもの、愛おしい人たちへの思い。常に過ぎ去ってしまう現在への、愛おしみのような感情ではないかと思う。今、あまり使わなくなった言葉だけれど、それはセンチメンタリズムといってもいいかもしれない。
この作品が流れていた当時、ぼくは大学生で...、などという自分の過去に関連づけた説明も一切不要なような気もする。なぜならこの広告は、当時でも流れた瞬間に「懐かしかった」からだ。
「元気で。とりあえず、元気で」などという甘いコピーも、とても素面でいえる言葉ではないのだが、お酒のCFだから。ちょっとお酒を飲みさえすれば、誰でも人を思うことができた時代。今、人は鬱になることはあっても、センチになることは少なくなった。ここまで人が孤立してしまっては。
センチメンタリズムというのは、かつて心があった場所への郷愁のようなものなのだろう。センチな時代が、またこないだろうか。それは、とても世の中を生きやすくするような気がするのだが、どうなのだろうな。
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