2009年10月 2日

モアイへの道(2)

FE108Sによるスーパースワン(人気投票第1位である)を、15年ほど前に作り、以来、スワンはわが家のエースとして働いてきた。細かいことをいえば高域の伸びが今ひとつであるとか、中低音にもう少し解像度がほしいとか、不満点はないでもなかったのだが、10cmフルレンジとしては、まさに奇跡の設計であり、奇跡の音であったと思う。

ユニットが寿命を迎えるまで、このシステムは使うつもりだったのが、昨夜、まったく低音の足りないFE103Mバスレフ箱の音を聴いて、考えが変わってきた。というか、打ちのめされた。そろそろ、スワンは卒業しなくてはならないのではないか。

次のエースになるべきスピーカーについて、いろいろ検討したところ、PMCのGB1i、ヤマハのSOAVO-3、KEFのiQ90なんてところが候補に上がってきた。いずれもトールボーイで、ピュアオーディオにもシアターにも使える。圧倒的なクオリティは、ひとまず置いてもかまわないから、いわゆる現代のオーディオの基準はどこらへんなのか、C/P比の高そうなところで確認してみたい気持ちもあった。タイムドメインのyoshii9も考えたのだが、あれは最高のサブシステムにはなりそうだが、いずれもうひとつ、大黒柱が欲しくなりそうだったので、今回は除した。

そうした中で、モアイのことを思い出したわけである。これは、たまたま高さ1mのトールボーイで(プロジェクター視聴を考えると、トールボーイが収まりがいい)、現在、検討しているリアスピーカーのユニットFE108EΣとの相性も良さそうだ。それに何より、このユニット構成でありながら、長岡師自身が「高能率、フラット、ワイドレンジの理想的なモニター特性である。音は方舟のメインシステムに似ている」とコメントしている。その5年後に亡くなるのだが、最晩年の傑作として長く語り継がれていくシステムになるのだろう。

ただ、どうしても1.6Ωというインピーダンスが気になった。わが金田アンプは、70年代の設計であり、しかも、ただでさえスピーカーをぶっ壊すことで知られる金田明彦氏の設計である。どこでどんな無理がしてあるか、自分では見当がつかないのだが、「メーカーでは絶対やらないようなことを、音のためには躊躇せずにやる」傾向があったことは確かなようだ。ユニットは飛んでも買えばすむのだが、あの時代のトランジスターの名石は、入手がなかなか大変だともいう。

例によって、とりあえず、白男川さんに電話してみた。

「トータルインピーダンスが1.6Ωになるスピーカーがあるんですけど」
「え、何?もう一度言って」
「いや、あのFE168Σをメインに使って、別にウーファーの箱を作るわけです」
「うん」
「そのウーファーがFW168というやつで、これを2発パラに使う」
「なるほど」
「そのパラったやつを、さらにパラってメインにつなぐと見かけ上の能率が4倍になりますよね」
「そうだね」
「そうすっとトータルで1.6Ωくらいになるわけなんですが、例の金田アンプ、大丈夫でしょうか」
「うーん...」
「無理かな」
「保護回路が働くか、こないだみたいにトランスが断線するか」
「ふむ」
「最悪、トランジスタが飛んでおしまいになる可能性があるね」
「そうかあ」
「でも、まあ、大丈夫かもしれないけど。でも、瞬間的に大電流が流れれば、怖いよね」
「ふむ」
「インピーダンスが低いということは、だーっと電流が流れるということで、スピーカーのインピーダンスは低音になるにつれて低いから、低音の大入力とかやると、かなり危険」
「そうですよねえ」

この時点で、もうあきらめていた。歴史遺産ともいえる70年代の金田式A級30Wを、そんなへんてこでイレギュラーな自作スピーカーのために、オシャカにしてしまうわけにはいかない。ここで、昨夜からの思考が断線状態になったワタシは、しばらくピュアオーディオはあきらめて、現用のスーパースワンを軸に、シアター方面の機器充実に向かってもいいかと思っていたのだが、ここで朗報。

なんと、問題のFW168(4Ω)は、すでに生産中止となり、FW168N(8Ω)に代替わりしていた。これなら、システムのインピーダンスは約2.7Ωになり、そこそこ、安全域といえるのではないか。見かけ上の能率は4倍から2倍になり、低域は3dbダウンという計算になるが、作例ではほんの少し量感不足にはなるが、実用上は問題ない範囲だという。

さて、パーツ代12万、板代3万、工具、塗料ほかで2万とみて17万くらいはかかりそうなこのシステム、試聴する機会もなさそうだけれど、作ってみるかなという気になってきたのだ。

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コメント

スピーカーと観賞魚の水槽は4本までという家内安全教訓を知っていますか?
スピーカーは対ですから・・・。

秋山さん

酒と女は2ごうまで、というのなら知っております^^;。

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