キングコブラ来たる
春の東風がびゅんびゅん吹く午後に、なんと、CHAPさんからキングコブラが届きました!
長岡鉄男設計のD-109「キングコブラ」。フォステクスの限定ユニット6N-FE88ESを片チャン2発使った首長バックロードホーン。ただし、このバックロードはいわゆるCW型ではなくて、長岡オリジナルといえそうなスパイラルホーンなのだ。
つまり、下部のベースになっている部分が、ぐるぐると渦を巻いて漸進的に開口が広がることで、低音を増強するもの。これのご先祖は、ざっと30年ばかし昔のD-103エスカルゴにまで遡りそうだ。エスカルゴは、スパイラルの起点にあたる部分にユニットを取り付ける薄型スピーカーで、長岡氏自身も、しばらく壁にかけて使っていた。
それから、スワン族にインスパイアされて、首が伸び、頭部にFE83を2発使うD-108「コブラ」が誕生。さらにフォステクスからESコーンを使った最新ユニット6N-FE88ESが登場したのに合わせて、パワーアップ版として「キングコブラ」が生まれた。長らく、CHAPさん宅のリファレンスとして君臨していたスピーカーだ。
ちなみに、その名称は、とぐろを巻いたホーンの上に、まっすぐに首が立ち上がった姿と、二つ並んだユニットが、コブラ(メガネヘビ)の模様に似ているから。というような振り返りを終えて、さっそく音出しであります。
まず、オーディオチェック用にいつも使っている、アートペッパーの「ミーツ・ザ・リズムセクション」。それに、山下洋輔の「センチメンタル」、エンヤの「シェパードムーン」、森田童子の「マザースカイ」なんてところ。音が鳴り出した瞬間、おや、と思うほど、スーパースワンと似た音がするのだけど、しばらくすると、だんだん違いも見えてきた。
なんというのかな、一言でいうと、美音。それも、音量をがまんして、音のたたずまいに耳を傾けると、えもいわれぬつややかで美しい音と、くっきりしたステレオイメージが広がる。ピアノ、ボーカル、ギターには最適。一方、録音の芳しくないロック系などでは、まあ、FMラジオを聴いているような感じになる。
これは、反応の速いユニットには特有の傾向で、スワンで録音の悪い音源をかけると、AMラジオよりひどい音がすることもある。つまり、良い音源はさらに良く、悪い音源はさらに悪く鳴らしてしまう傾向がある。
どんどん音量を上げていくと、意外に早い時点で歪み感が増えてくるので、「中音はマシンガンのごとく、低音はバルカン砲のごとく」といった、いわゆるオーディオ的な快感を求めるシステムではないと思う。オーディオ的というよりも、音楽的。床の専有面積に目をつぶれば、6畳~8畳で、普通の音量で音楽を聴くのに、こんなに夢の世界に連れていってくれるスピーカーは、そうはない。エンヤなどは、いつまでも聴いていたい気分だった。
以上、あくまでもスーパースワンとの比較。スワンのFE-108Sは、薩摩武士のように寡黙だけど、いざとなると示現流で一刀両断にしてしまう馬力のあるユニットであることが、今回、あらためてわかった。また、その静かさは、重量も効いているのだろうと思う。何しろ、重しを含めて40キロを軽く越す。これで10センチを鳴らすのだから、余計な響きも出ないかわりに、押しつぶされたような感じになりそうなものだが、FE108Sは、その重量を足場に、のびのびと音を出してくる。
そのスーパースワンと、キングコブラでマトリクス接続をしてみた。結線を変えるだけで、4chサラウンドが実現するスピーカーマトリクスは、もっとも安価でもっとも音質が良いシステムだけど、何しろ費用がタダに近いので、メーカーもメディアも、まったく宣伝しなかった。
唯一の欠点は、フロントとリアの音量バランスを、スピーカーの位置で調整するしかないことだけど、まあ、このスワンとキングコブラの組み合わせは、目のさめるような広大、高密度の音場を作った。こればかりは、体験してみないとわからない。
それに、マトリクスにすると、気軽に聴けるというメリットがある。手の届きそうなところに、音像があるので、神経質にセンター定位を探さなくていい。ステレオイメージが三次元(あるいは時間の経過を含めて四次元)になるので、マニアが無意識に行っているはずの脳内作業からも解放される。こちらは、ただ音像と音場と音楽に身をまかせればいいので、これは楽だ。
D-109「キングコブラ」。その迫力のある名とはかなりイメージがちがう、繊細でつやのある美音システムと見ました。CHAPさん、ありがとう。
追記:音量の件は、頭部に重しを載せることで、かなり改善しそうな感じです。今度、試してみます。
コメント
マザースカイは廃盤なんですよね・・・。
森田童子はLPで数枚持ってますけど、FM東京に出演した時のカセットエアチェックテープが宝物です。
ワタシと生年月日が2日違うだけ。多分日比谷公園で同じときにデモしていたと思います。拓郎は禿げ、陽水はサングラスを取ってしまったけれど森田童子はずっとこれからもカーリーヘヤーでサングラスです。
Posted by 秋山 at 2008年3月11日 11:59
秋山さん
ぼくもマザースカイは、LPでしか持ってないです。先日、送っていただいたSHURE V-15 TypeⅢで聴かせていただきました。
こないだTVで東京カテドラル聖マリヤ大聖堂が出てきて、ああ、ここで「土門は…」って話をしてたんだなあと、ちょっと感動しておりました(^^;)。
Posted by JUN at 2008年3月12日 04:53
JUNさん
キングコブラは明らかに剛性不足です。音量を上げられません(^^;
重量ブロックの上下に厚手のフェルトを貼り重しとして乗せるといいです。
フェルト張り重量ブロックはスピーカー工作の必需品です。
スワンをフロントにキングコブラをリヤに使うといずれも点音源ですから相性がいいでしょうねえ。
気に入っていただけたようで良かったです。
実はスーパースワンの音を聞いてかっら、いつかはスワンをと思っておりました。
FE138ES-Rのアナウンスを見逃さなかったのはそれがあったからです(^^;
スワンタイプのエンクロージャーは今塗装に入っております。明日にでもユニットを取り付けられるでしょう。
限りなくエクスポーネンシャルホーンに近いバックロードホーンに収めたFE168ESは派手さはないけど落ち着いた懐の広い大人の音がします(^^;
ベルリオーズ、マーラー、リヒヤルトシュトラウスといったあたりを聞くには最高です。
・・・・ウルトラスーパースワンの音が楽しみで〜〜〜〜す(^^;
Posted by CHAP at 2008年3月13日 16:44
CHAPさん
どうもありがとうございます。
さっそく、ヘッドの部分に5キロの鉄アレイをのせてみました。これだけでも、だいぶ音は安定してきますね。
スワンは、徹底的に重量を加えています。胴部上面に、ちょうど首の部分だけ凹んだ形の箱を作ってのせてありまして、この箱の中には砂利とパチンコ玉を詰め、重量は20kg以上あったと思います。誰かほかにやっているだろうと思うのですが、今まで見たことはありません。
最初、テストした時に、音の重心が下がり、低音が深々と出て、かつベースなどの音程が安定する効果を確認したので、そのままにしています。
FE138ES-R、一度、聴きに行きたいです。
Posted by JUN at 2008年3月14日 00:19
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