2007年12月13日

映画>社長太平記

『社長太平記』(笠原良三監督/1959)。

森繁久彌のサラリーマン喜劇もの。どういうものか、日本映画専門チャンネルはこのシリーズを通年やっている。たしか、去年もやっていたと思う。

これはシリーズ第一作で、社長・森繁久彌、専務・小林桂樹、庶務課長・加東大介、営業部長・三木のり平というラインナップは、その後も続いていくのだけど、主演級三人の人間関係というか、上下関係の描き方が、ちょっと興味深かった。

映画の時代の15年前、3人は旧海軍で同じ巡洋艦に乗組んでいた。艦長・加東大介、兵曹・小林桂樹、水兵・森繁久彌で、その後、時代の劇的な変化の中で、会社での地位は上下がきれいに逆転する。そして年齢は、加東・森繁・小林の順になる。つまり、三通りの複雑な「上下関係」の中を彼らは生きているわけで、さらに森繁と小林は、かつては殴られる側と殴る側というポジションでもあった。

仕事の場で、生活の場で、女が絡んだ場で、それぞれの立場が微妙に変化し、時に入れ替わり、その都度に言葉遣いや態度がくるくる変っていく。このあたりの描き方に破綻がなくて、人間関係がうまく出ているので、映画としてもちゃんと成立しているんだろう。

それにしても、これだけ喜劇で押しながら印象的な台詞がほとんどないのは、このシリーズの特質なのかもしれない。つまり、外国映画のように、よく練った脚本と演出で笑わせるのではなくて、俳優個々の「芸」に頼った笑いだったような気もする。その「芸」については、森繁久彌は超一級だけれど。

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