2007年9月11日

映画>幕末太陽傳

『幕末太陽傳』(川島雄三監督/1957)。

ぼくの、とっておきの映画。何度も観たいのだけど、そんなに何度も観るのがもったいないというような作品。それでも4度くらい観た。観るたびに、川島雄三監督のリズム感の良さとか、カメラワークの巧みさに驚く。それ以上に、フランキー堺の神がかった超名演に驚く。

もう、この映画は、フランキー堺につきる。といっていいんだろうと思う。古典落語の「居残り佐平次」を、おおまかな下敷きにしたこの作品の、佐平次役。その、軽妙とか洒脱とかいう言葉では表しきれない、ほんとに何かがのりうつっているんじゃないかというようなものすごいテンポと台詞まわし。カメラと監督と佐平次が、互いに負けずにハイスピードでどんどん飛ばしていくビ・バップのようなスイング感。

他に、「三枚起請」、「品川心中」、「お見立て」などの落語ネタを随所に織り込みつつ、とにかくどんどん突っ走っていく。その間に登場する小沢昭一の怪演、石原裕次郎の高杉晋作のいい男ぶり、女郎の南田洋子、左幸子のしたたかさ、小林旭の久坂玄瑞、さらに殿山泰司、岡田真澄、菅井きん、金子信雄...。

当時の太陽族を意識したタイトルとキャストではあるけれど、これはもう、そんなコンセプトをぶっとばしてしまう大傑作のドタバタコメディ。笑いと無常感やニヒリズムが、こんな形で一緒になったのは、どういうはずみなのか知らないけれど、古今東西稀なことではないかと思う。

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