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『マッシュ』(ロバート・アルトマン監督/1970)。
朝鮮戦争の前線における、めちゃくちゃにぶっ壊れた軍医たちのお話。このウッドストックの翌年に公開された映画は、全編通して、狂乱怒濤のコメディなんだけど、終わってみれば反戦・反体制映画になっているというところが面白い。
脚本を、アカ狩りでハリウッドを追われた「ハリウッド・テン」の一人、リング・ラードナー・Jrに依頼した時点からして、この映画が並のものにはなりそうにないわけだけど、監督と俳優は、この脚本すら無視して全編アドリブに次ぐアドリブで作ってしまった。
「おれの台詞は一行も残っていない」と、ラードナーは本気で激怒したらしいけど、皮肉なことに彼はこの作品で、アカデミー脚本賞を受賞している。
ロバート・アルトマン監督はTVシリーズ「コンバット」の演出をしていた人だけど、あの作品も、派手なアクションとサンダース軍曹のかっこよさを、ちょっと遠目に引いてみれば、やはり反戦作品だったことがわかる仕組みになっている。そしてこの『マッシュ』は、朝鮮戦争を舞台にしながら、実はベトナム戦争を描いていた。
カメラワーク、台詞まわしに、『コンバット』との共通点は感じられない。第一、台詞がアドリブなせいだか、そういう演出なのか、複数の人物が同時にしゃべったりする。それが臨場感にもつながっているのかもしれない。
当時、20世紀フォックスは『トラ・トラ・トラ』と『パットン大戦車軍団』の二つの戦争大作の製作にかかっており、本来、許されないはずの、このはちゃめちゃ映画に目が届かなかったらしい。編集ラッシュを観て、幹部は腰を抜かし「史上最悪の映画になる」と言った由。そこから強烈な干渉が始まるのだが、なんとか実現した試写で、観客が大ウケだったことから公開にこぎつけた。
主演のドナルド・サザーランドは、当時、極貧にあえいでおり、これが出世作になった。350万ドルという低予算だったため、この作品で実に10人の俳優が、相当重要な役どころでデビューしている。
以上、蘊蓄部分は特典映像より。
絶対におすすめの映画であります。
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