TC-1の心地よき緊張感
芥川仁さんに無理をいって譲ってもらったミノルタTC-1。ソウルでの仕事の合間に、ほんとのスナップ写真を(「作品」を意識しないという意味で)、100枚ほど撮ってみた。
ライバルとされているGR1ユーザーにとっては、TC-1は、たぶんかなり使いにくく感じるんだろうなと思う。「気軽なスナップマシンとしては」だけど。
まず、ストロボが強制発光/発行禁止/夜景の3モードだけでオートがない。だもので、カメラまかせということができず、いちいちモードダイヤルを回して→アップダウンスイッチで切り替えという作業をやらなくてはならない。この過程を経ないと、当然ながらストロボは絶対に光らないか、絶対に光るかのどちらかだ。撮影前に、現在のモードを確認する必要がある。
また、プログラムオートがなくて、絞り優先AEのみ(3.5/5.6/8/16)なので、これもまた撮影条件を一度頭の中で整理して絞りを決め、それから撮影という段取りになる。加えて、ストロボ発光時は絞り3.5に指定されているので(これを無視するとどうなるのかまだ試していないが、シャッター速度は変わらないので...)、ここでもまた一段階、手順が増える。
つまり、ある程度カメラの知識があって、撮影条件に合わせて瞬時に設定を判断できる人向きのカメラなのだ。ボディが小さいので、お気楽スナッパーとして使いたい気になるのだが、むしろこれをスナッパーとして活用できる人は、相当な腕なのだともいえる。
今挙げた欠点(?)は、すべてGR1ならクリアできる。最強スナッパーを選ぶなら、たぶん正解はGR1だ。GR10の割り切り方(露出補正をもたない完全オート機)も好感がもてる。TC-1は、外見からのイメージほどお気楽なカメラではなかったというのが、今のところの結論。たぶん、ソウルでの写真も、相当な枚数が操作ミスからおかしなことになっていると思う。
のだが。
ぼくは、今回たった3本のリバーサルを撮っただけで、相当このカメラにほれてしまったのですね。このちょっとしたムズカシサ・緊張感が、なんとも心地よい。操作性も、ヘキサーに比べれば全然良いし、ちょっと特殊な体系になっているだけで、慣れてしまえば問題なさそうだ。
街の中をどんどん歩きながら、スナップを撮るという時には、マニュアルフォーカスで2mくらいの固定焦点にしてしまえば、AFのタイムラグもなく、がしがし撮ることもできそうだが、たぶん、TC-1はそこまで。森山大道さんのGR1のようにノーファインダーでシャカシャカ撮るようなことには、あまり向いていない。ちゃんとファインダーを見て(あてになるかどうかは別として)、露出も意識して撮りたくなるカメラなのだ。と思った。小さいけど、本質的に機動的であることよりも、もっと他のことに意識を注ぎたくなるカメラだともいえる。
ただね。女の子が同席している飲み会で撮る時には、コンパクトデジカメに負ける。液晶でその場でモニターできるというのは、強いよなあ。TC-1では盛り上がりに欠ける。これはGR1でも、同じだけど。
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