ヘキサーの凄さについて
TC-1を手に入れて、しげしげと眺めたり、いじくりまわしたりしていた。
「趣味とは手段が目的となることだ」と、いみじくも長岡鉄男が喝破していたけれど、ほんとに至言であって、こういう良く出来たモノというのは、写真をどう撮ろうとか何を撮ろうとか、考えなくてもよいのではないかという気になってくる。考えてもよいのだが。
で、隣にあったヘキサーを、あらためて手にとってみると、やはりこいつは凄い。なんだかモノとしての凄みすら感じるほど凄い。
まず、メインスイッチを入れた時の音が途方もなく静かである。かすかに、「じじっ」という床下で何かの虫が鳴いたような音がするだけだ。TC-1は、耳元でクツワムシが鳴くくらいの音がする。フォーカス音もシャッター音も同様で、ヘキサーの静けさというのは、機械としての精度はもちろん、写りの緻密さまで予感させるものだ。
もちろん、大きさも重さも、TC-1とは比べものにならないのだけれど、逆にいうとここまで大きくて、ここまで緻密なものを作ってくるというのは、たいしたことだと思う。
ヘキサーの出番は、クルマの旅を想定していた。やはり飛行機での出張のついでには、ちょいとつらい。週末、またソウルへ行くことになっているので、そのためもあって急いでTC-1を譲ってもらったのだが、「残念ながらヘキサーは置いていくが、その代わりはちゃんと務めてくれよ、TC-1」という感じになってきた。
コンパクトカメラが好きな人は、一度使ってみることをおすすめします。「これでコンパクトかよ」というサイズ（ライカよりは小さいけど）と、操作性の不便さにさえ目をつぶれば、これ、相当よく出来てますぞ。
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