2005年4月27日

ヘキサーを買うこと

B型であるせいか、時々、突発的逆上的行動に出ることがある。山下洋輔風にいえば「一気に勝負に出て自滅」というパターンなのだが、最近は、さすがにそのあたりの呼吸がわかってきて、自滅まではしない。これはこれで、情けないことではある。

昨日の夕方、カメラマンの深澤猛志君と打ち合わせをしていて、カメラの話になった。

「何時だっけ」
「6時45分ですね」
「あの中古カメラ屋は7時に閉まるんだっけね。どんぴしゃ、閉めるかな」
「閉めますね。どんぴしゃ。」
「ヘキサーがほしい。今、買いに行く。君、電話してくれ。今、行くと」
「今、行くんですか」
「今行く。すぐ行く。たった今行く」

そんなわけで、どたばたと家を出て、中古カメラ店「トクヤス」に乗りつけ、強奪するようにコニカのヘキサーを買い、そのまま二人で飲みに出た。

いや、もう、なんというのか。あのヘキサーが、今、わが手にあるのである。F2.0のヘキサノンである。35mmだけど、ヘキサーなら35mmだろうが40mmだろうが、どってことはないのだ。

一軒目、初めて入った居酒屋「幸魚(ゆきお)」は、狙いたがわず大当たりであった。なんであれ「旬」というならば、うまくて安くなければならない。その季節ならではの途方もなくうまいものというのは、イワシであれカツオであれ、高いものであるわけがないのだ。そういうことをよくわかっている。歴史は浅いが名店である。あんまりお客が多いものだから、棚の招き猫が二匹、後ろを向いていた。

そのカウンターで、焼いたホタテ、ミズイカのゲソの焼いたの、里芋の煮たの、イワシの酢洗い、クルマエビ(生)などといったものを肴にお酒をなめながら、ぼくはヘキサーをいじりまわし、ただひたすら、にこにこしていた。春のイワシを、あんなにうまく出すなどは、やはりこの店はただものではない。

それからコンビニでISO400のネガフィルムを買い、ヘキサーにつめてふらふら歩きながら、ミッキー大野さんの「フォークビレッジ」へなだれ込み、わあわあと騒いで、ギターを弾き、わあわあ騒ぎつつ帰る。

お酒はさめてもヘキサーは残る。
ずっしりと重くて黒い初代ヘキサー。

なんだか初心に帰ったというような
みずみずしい心持ちなのであった。

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