2005年4月20日

ギターの「鳴り」について

OOO-28ECのおかげで、長年抱いていた「ギターにおける鳴り」についての
認識がだいぶ変わってきたので、書いておく。

長岡鉄男が「スピーカーは能率である」と断言していて、
それはまったくもっともなことであり、能率の高いスピーカーは
音離れが良く、ダイナミックレンジが広大で、音楽をいきいきと表現する。
・・・傾向がある。

たとえば、出力音圧レベル90dbのスピーカーと80dbのそれとでは、
ざっといってアンプの出力が10倍になったのと同等になる。
30Wのアンプが、見かけ上300Wで動作することになるわけで、
いかにアンプは出力ではないとはいえ、この差は大きい。

反対に能率が低いと、音は鈍く暗くなり、反応は遅く、ダイナミックレンジは狭く、
どちらかというと大音量でないと本来の性能を発揮しにくい。
・・・傾向がある。

能率が低い上に大音量で鳴らそうとすると、相当パワフルなアンプが必要だが、
小型スピーカーで低音を十分に出そうとすると能率を下げざるを得ないので、
小さなスピーカーを、巨大高級なアンプで鳴らさなくてはならない。
まず、そんな人はいない。

ギターも同様であると思っていた。

特にアコースティックギターの場合は、電気的な要素が存在しないので、
楽器そのものの鳴り=能率が十分に高くないと、小音量から大音量までの
音量の幅=ダイナミックレンジが狭くなり、音楽的な表現力が弱くなる。

つまり、ギターにおける表現力とはダイナミックレンジであり、
おおまかにいえば「鳴り」のことだと、なんとなく思っていたわけである。

ところが、ぼくのOOO-28ECは、若いせいもあるがそんなに鳴る楽器ではない。
むしろ、長年親しんできたVGやスリーS(オールドマーチンのコピー)の方が、
ずっと鳴りは良い。特に20年が経過したスリーSなどは、小さなボディなのに
実にセミが鳴くごとく、盛大に鳴るのだ。
Yahoo!オークションなら、「激鳴り」とキャッチをつけてもよい。

なのに、音楽性、表現力、楽しさといった点では、やはりマーチンなのだ。
それも、位がちがう、桁がちがうといったほどの差が出てしまった。
しばらく、頭の中を「?」が飛び交っていたのだが、ここではたと気づいた。

これもまた、スピーカーと同じなのだ。
能率の高いスピーカーは、原則、長岡鉄男のいう通りの美点があるのだが、
実際の製品では、音が粗く、がさがさして、あるいはそこまではないにしても
音色的に魅力に欠けるものが、残念ながら多い。

同様に、10年たち、30年たち、材が枯れてきて鳴りが良くなったギターであっても、
もともとの「音」が良くなければ、がさつな胴間声のような鳴りになりやすいのだ。

なんだ。そういうことだったのか。
と、拍子抜けするほど単純な話だったのだが、
これもまた、マーチンを弾き込んでみないことにはわからないことだった。

「激鳴り」は、もちろん歓迎すべきことだが、ぼくの中での
そのことの価値と意味は、ずいぶん下がってしまった。
70年代の、当時ちょっと良かったギターを集めてみようかと考えていたのだが、
たぶん、それらを手にしたところで、そんなに可愛がってはやれないことだろう。

マーチンは思ったほど鳴りが良くないのが多い。とよくいわれるし、
ぼくもそう思っていたのだが、今となっては「だから何なの?」なのだ。
特に若いギターなら、鳴りがもうひとつなのは当然だし、
ギターにおける音楽性とは、それとはまた別の要素だ。

単純に音色というのもちがう。演奏性や操作性、バランスなどなど、
ギターは、こうあってほしいなあという感性でもって練りこまれてきた
ひとつの楽器としての完成度の点で、また、実際に弾いた時の
楽しさの点で、わがマーチンはVGやスリーSとは比較にならなかった。

なるほどなあ。
と思うわけである。

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