締切りの日程が二日ずれそうになり、その重圧の中で自分を見失いそうになったので、自分を取り戻すために『信長の野望』をしていたワタシの部屋へ、娘がやってきていう。

「あのね。入場券が当ったの。金曜日に『熱血オヤジバトル』を観に、福岡に行っていい?」
「あんだそれは」
「ゴダイゴがゲストなの。珍しいことだから、観にいきたい」
(娘は、母親の教育が効を奏して自分と同じゴダイゴファンなのだ。そっちの方がよほど珍しい)
「だめだ。ゴダイゴはともかく、熱血オヤジバトルなんぞというタイトルが気にくわん。そんなタイトルをつけたやつもバカなら、オヤジと呼ばれて、喜んで出るやつもバカだ。そんなのを観に行くなんて、やっぱりバカのすることだ」
「そんな。タイトルなんて、どうだっていいじゃない。ゴダイゴは今観ないと、次いつになるかわからないのに」
「だめだ。大体、高校生が4時間もバスに乗って福岡に遊びに行っていいと思ってるのか。」
「友達を誘うから」
「だめだ。友達のことまで責任はとれんぞ。それに大体、お父さんは今、忙しいのだ」
「『信長の野望』、やってるじゃない」
「忙しいからやってるのだ。ひまだったらゲームなんかやるものか」
「ちょっと今の、わかりませんけど。」
「るさい。これ以上、なんかいうと、窓から放り出すぞ」

まったく、オヤジとはワタシのことだ。

翌日の夜、今度はオクサンがやってきていう。

「あのね。金曜日の夜に、子供たちとみんなで6人で福岡に行っていいかな」
「あんだそれは」
「『熱血オヤジバトル』の入場券が当ってるの。トモカが言わなかった?」
「聞いてるけど、なんで6人なんだ。子供が増えたのか」
「アキちゃんと、アキちゃんのお母さんも一緒に行くって」
「好きにしなさい」

金曜日、ワタシは地獄のような締切りをくぐり抜け、二匹の猫とともに、ひっそりと暮らした。ご飯を作るのが面倒くさいので、昼と夜を紅茶とパンですませ、翌日の朝食は食べず、夜は飲みに行った。なにもかも、一人でやった。月に一度くらいは、福岡に行ってくれてもいいかな。

帰ってきたら、わが家のゴダイゴファンは4人になっていた。小学生の娘二人が、お風呂で「ビューティフル・ネーム」を歌っていたりする。子供が歌うと、非常にいい歌だったことがわかる。以来、ワタシも口ずさんでいるのだ。