天井棧敷の人々

『天井桟敷の人々』(マルセル・カルネ監督/1944)。

仕事が山を越したので、ごほうびにとっておきを観た。とっておきといっても「まだ見ぬとっておき」だ。まだいくつも、そういうのがある。

3時間10分もある大作なのだけど、画面が走り始めてすぐ「すごい」「これはすごい」「ものすごくすごい」といいつつ、わくわくどきどきに放りこまれ、1部が終わってそそくさとコーヒーを飲んで、2部を走り抜けて、あっと思ったらこんな時間だ。

占領下で、3年もかけてこんな映画を撮るフランス人というのは、いったいなんなのだ。例の柔道のドイエ以来、フランスと聞くだけで、むむ、という感じがあったのだが、一人の馬鹿のために目が曇るところだった。

にぎやかで、陽気で、やばくて、ふしだらで、どうしようもなく深い戦前のパリという街の喧騒を描くことが、そのまま彼らのレジスタンスでもあったのかもしれないが、そんなことよりも、とにかくこの映画、役者も台詞も脚本もカメラも何もかもがすごい。何よりも映画への愛情がすごい。

大いなる群集の波の中を、それぞれが、それぞれの方法で、それぞれの人生を生きようとする。あるいは死のうとする。町を出たくなった。あそこへ行きたい。

今日の言葉。

『この劇場は客がいい。天井桟敷を見ろ。上の奥の方だ。貧しいが、黄金の客だ。』