気功に行くこと
仕事の打ち合わせで写真家の芥川仁さんの事務所を訪ねたところ、わが身の状態を見かねて、気功の先生を紹介してくださった。
宮崎市の丸山先生という。1日に5人しかみることができないこともあって、5月まで予約がいっぱいとのことだったが、急患扱いで夜、時間をとっていただいた。丸山先生は品の良い老婦人で、言葉なども大変おだやかな方だ。
以前、お会いした気功の先生は空手の道場主で、禅寺の住職も兼ね、空手と禅の道を追求しているうちに、沖縄を経て台湾の気功の大家にめぐり合い弟子入りしたという、山岡鉄舟のような人だった。この人の気功は外気功というもので、「その場の気を降ろす」イメージであるため、日に10人、20人とみても平気だという。丸山先生のは、外気功なのか自分の気を使う内気功なのかわからないけれど、症状によっては一人に1時間も費やしたりするため、日に5人が限度なのだろう。
いろいろ、一所懸命やってくださっているうちに、気持ちいいとか以前にありがたいような気の毒なような気持ちになってきた。一個の丈夫たるものが、肩が痛いくらいのことでお年を召した女性に、ここまでやっていただくいわれはない。ほかに交通事故などでえらい目にあいながら、順番を待っている方もいるだろう。
次回、みてくださるといわれても辞退して、なんとか自力で治さねばならぬと考えていると、「おはようございます」と声をかけられた。眠ってはいなかったのだが、半覚醒のような状態だったようだ。気づくと1時間20分が経過していた。
「暮れか正月に、風邪をひかれましたね」
「はい。元日に熱がでました」
「それが引き金になりました」
「肘枕で寝る癖がありますか?」
「肘枕ではありませんが、ソファで横向きに寝ることは多いです」
「その負担がきちゃいましたね。腰も痛めたでしょう」
「はい。昨年の秋から3か月くらい」
「それから、左脳を使いすぎですね。頭脳が疲れています」
「どうしたらいいですか」
「お酒でも飲みなさい」
「そりゃ、うれしい」
立ち上がると、生まれ変わったような爽快感で肩の痛みもほとんど消えていた。ここを訪ねた時は、出されたお茶の盆を受け取るのも難儀していたのだ。
「鏡をごらんなさい。顔も変わりました」というので見てみると、目がぱっちりと開いていきいきとし、額も生気に輝いているではないか。『ロード・オブ・ザ・リングス』で、蛇の舌グリマにそそのかされて半死半生になっていたセオデン王が正気を取り戻して生き返る、あのシーンがわが身に起こっていた。そうか、正気を取り戻すというのは、このことだったのだな。
実に貴重な経験をすることができたし、いい人に出会えた。
首を痛めるというのも、こう考えると悪いことではないな。