台風が接近しているので、世間はなんだかひっそりとしている。

子供の頃はこういう時に、なんだか胸おどるというか、わくわくする感じがあったものだけど、実は今もその通りなのだった。週に1度、講師をしている専門学校から「明日は生徒たちは自宅待機です」と連絡があった時など、返事に欣喜雀躍とした雰囲気が混じらないように、ちょっと苦労した。

自分自身が、学校とか授業とかいうものが退屈で退屈でどうしようもなかったので、わりあい情熱を傾けながらコトに当たっているのだが、こうなると話は別である。自分ひとりサボるのではなくて、世間が一斉に、やむなくお休みになるというのが、いいではないですか。こういう、いつ寝ようがいつ起きようが、仕事しようがしまいが、自分のことは自分で決める寄るべなき身勝手生活を続けていると、「みんなで一斉に休み」というのが、うれしかったりするわけである。

うれしいのでサケを飲み始めた。黒糖焼酎から始まって、今ウイスキー。肴はなにやらの味噌漬けと塩ジャケという、中山間地の民宿の朝食に出てきそうなもの。別にこれが好きというわけではないのだが、ふだんあまり家で飲まないものが突発的に飲む気になると、このようなものしかないのだ。

さっきからセロニアス・モンクを聴いている。

音を聴いた瞬間、ため息が出るとか、うーんとうなるとか、目が遠くなるとかいうのは、けっこうある話だけれど、「いやー。はははー。そうでしたなー」と思わず苦笑してしまう人はモンクくらいだ。人は、自分の常識にないものに出会うと、反射的に笑いだすことがある。要するにこの人も天才なのだ。