JAZZは、まったく詳しくない。時々、家に遊びにきた人が、とっちらかっているCDを見て「お。ジャズがお好きなんですね」とか言ってくれたりするけれど、聴いていますというほどのことはまったくない。「ジャズを聴いている」とは、そんなに甘いもんではないのだという時代に育ったので、100枚やそこらのアルバムを聴きかじったくらいで、そんなことは口がさけても言えないのだ。

こればかしは、物量の世界であると、古い世代のワタシは思う。少なくとも1000枚くらいは、しかもそのうちの300枚くらいを没頭して聴いたことがなくては、どうにもならんのだと。もっともジャズファンは、みんな古い世代だ。

それでも、男は十五の日々を繰り返して生きていく。十五の時に、ジャズに出会ったワタシは、やはりかけるCDの半分くらいはジャズだった。ただ、その物量と密度という点において、キャンベルのチキンヌードルスープほどのボリューム感もないということなのだ。もっともあれは、けっこううまい。

それでもなおかつ、「あっ。しまった(笑顔)」というアルバムに出会うことがある。いくらなんでも、これを聴かずに今日まで生きてきてしまったのかという軽い後悔とともに、それをはるかに上回る喜びを素直に感じることができるアルバム。

前置きが大変長いのだが、ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」である。おそらく、音楽ファンでこのジャケットに見覚えがない人は、いないと思う。と、断言する。だって、これを知らなければ少なくともジャズのサックスは始まらないわけだし、そもそもジャズが始まらない。それほどの大名盤のはずなのだ。

で、ワタシは音楽ファンともジャズファンともいえない、へたれリスナーである証拠に、このアルバムの存在を30年ほど忘れていた。ジャズ喫茶で、人の家で、何度聴いたかしれないのに、CDはおろかレコードすら所有していたことがなかった。もう、なにをかいわんや(笑顔)。なのである。

うれしい。こういうものに、ばったり出会うというのはうれしい。1曲目の「セント・トーマス」は、20代のある日に、友達8人ほどで酔っぱらって鹿児島の名店『パノニカ』のステージを占拠し、めちゃくちゃに演奏(?)したこともあったっけ。4曲目の「モリタード(マック・ザ・ナイフ)」も、もちろん覚えていた。3曲目の「ストロード・ロード」にはひっくり返った。こんなにすごい演奏だったとは。