2009年9月20日

映画>アイデン&ティティ

『アイデン&ティティ』(田口トモロヲ監督/2003)。

原作みうらじゅん。あのバンドブームの頃の80年代半ばに、「ロック」を求めて右往左往する若きバンドマンの物語。

ちょうどその頃、ぼくはバンドの街ともいえる久留米でタウン誌を作っていて、アマチュアバンドのコーナーを毎号8ページ持っていた。アマバンといっても、かったりいのから目の覚めるようなの、聴いたこともないような新しいの、自分の人生に決定的に影響を与えてくれたのまで、ほんとにいろいろいた。

あの時代、最高のバンドをいくつか挙げろという話になると、ザ・バースデイクラブ、ローリングソバット、ザ・フィフティーズ、ジャンキー・ヒップシェイクなどという名前を思い出すのだが、熱でいえばローリングソバットは最高のバンドだったし、ロックの本筋ということでいえば、田中シゲル率いるザ・バースデイクラブも最高だった。

ザ・フィフティーズは、チェッカーズのようなオールディーズ系のバンドとして圧倒的な人気で、ポプコン全国大会で川上賞を受賞、ジャンキー・ヒップシェイクはちょっとストーンズみたいな骨の太い音で人気があった。その他、お笑い系あり、癒し系あり、超絶技巧のビッグバンドありで、あの時代の久留米のアマチュアバンドコンサートくらい、面白いものはなかったのだ。

一度、久留米(筑後文化圏)に、どのくらいバンドがあるのか数えてみようとしたのだが、とりあえずホールで20分なりもたせられるレベルのだけでも300、中学生・高校生が勢いで組んで、それなりに聴けるものも含めれば500以上はあったと思う。

で、いわゆる「イカ天ブーム」が久留米にどのくらい影響があったかというと、体感的にはまったく関係なかった。「イカ天に出たい」とかいう話も聞いたことがなかった。

それよりも、「市民会館小ホール(250名)を単独ライブでいっぱいにしたい」とか、「▲▲のやつらにゃ負けられねえ」とか、「おれらがロックちゅうもんを見せてやるとばい」とか、そういう話が多かった。

大体、あの街には一種の勘違いが満ちみちていた。「久留米で一番になれば、日本で一番ちゅうことやろう」というものなのだが、それはまったく怖いもの知らずというか、世間知らずというか、ある意味、おめでたくさえもある話ではあるのだが、またある意味、本質的に正しいといえなくもなく、また、そういう勘違いを若い衆が心に抱くと、それはそれで揺るがしがたいパワーになる。

たしかに鮎川誠に始まり、陣内孝則、チェッカーズと、久留米でアマチュア活動をしていて、飛び出していった人たちは多い。

久留米のロックというのは、むしろ伝統芸能に近いもので、気のきいた若い衆なら一度はバンドをめざす。それが、どんなバンドかというだけのことで、バンドを、ロックをやるということについて、ブームもへったくれもあるものではなかった。大きくなったら、女の子に恋をするように、バンドをやる。それだけのことだった。

キングトーンズのメンバーの方にそういう話をしたら、川崎もそうだと言っていた。町の感じが、どこかしら似ていたのかもしれない。

だもので、この映画に描かれている「イカ天で売れて、ブームが過ぎて落ち目になり、それをきっかけにロックの本質に出逢う」というような状況とは、全然リンクしないとはいわないまでも、まあ、あんまり関係がなかった。

その意味では、バンドブームについては、みんな醒めた目で見ていたように思う。それよりも、自分らが日本をツアーするような状況になった時に、どうするか、みたいなことを、たとえば田んぼの中のスタジオで熱く語っていたりしたわけだ。

そういえば、陣内孝則はロッカーズというバンドだった。映画になっているので、近く観てみようと思う。できれば誰か、鮎川誠の映画を作ってくれないかと思う。マコちゃんの筑後弁とロックンロールが全編、炸裂する映画。楽しいだろうな。

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コメント

今手元に`79.8.8ROCKDAYという神戸サンテレビ特別番組のDVDがあります。
優歌団が懐かしい(^_^;

この8.8ROCKDAYからはウェストロードブルースバンド、上田正樹&サウス・トゥー・サウス、ツイスト、円広志なんてのが出たようです。
関西はめちゃくちゃですね。
愚息も一応大阪のインディーズバンドの隅っこに居ますが、同じライブハウスで猫ひろしが出たりしているようです(^_^;

70年代後半くらいの関西というのは、すごかったですね。憂歌団はデビュー当時、23歳くらいだったと思いますが、あれで完成されていますし。どうやったら、あんな感覚が身につくのだろうと不思議に思ったことがありました。

誰がカバやねんの、あのボーカルも、とうとうあのまま、へんてこな風になってしまいましたけど、大人にならないというのは、ああいうことなのかと、ちょっと複雑な感じではありました。

息子さん、がんばってるんですね。

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