カーズ/クロスロード

『クロスロード』(ウォルター・ヒル監督/1986)。

ぼくが洋画でベスト10を選ぶとすれば、この作品は入ってこないかもしれない。でも、じゃあ洋画ベストっていう趣向じゃなくて、ほんとに好きな、とっておきの、蔵出しの作品を出してみなさいと言われれば、これを1番にしたっていい。そのくらい好きな映画。

この作品がレンタル店に並び始めた1987年頃、ロバート・ジョンソンなんてほんとに好きなマニアしか知らなかった。だもので、この映画にコーフンしたぼくは、「ラルフ・マッチオがね。ロバート・ジョンソンの幻の30曲目を探して南部を旅する映画なんだよ。すげーんだよ」なんて語る相手もほとんどいなかった。あれから20年たって、「ロバジョン知ってる人口密度」は、10倍くらいになったような感覚がある。いいことだ。

ザ・バースデイクラブという久留米のバンドでボーカルをやっていた田中シゲル氏に、この映画の話をすると、彼もすぐに観て感激したらしく、これをモチーフにした曲を書いた。あの曲もいい曲だったけど、知る人はロバジョンを知ってる人よりもうんと少ない。

とにかくギター弾きにとっては、こんなに楽しくもロマンティックな映画はない。ジュリアードに通う天才クラシックギタリストの少年が、ニューヨークの療養所から脱走した伝説のブルースマン、ウィリー・ブラウンと放浪しながらミシシッピへ向かう。こう聞いただけで、うひょーと思える人にはおすすめ。

旅をしながら少年のギターは、昔のブルースのコピーからどんどん進化していく。そのフレーズはライ・クーダーだ。なるほど、ライ・クーダーの音楽というのは、そういうことだったのかと知る。この人には、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の時もお世話になった。クーダーがいなければ、素敵な映画を二本も観そこなうところだ。