80日間世界一周

『80日間世界一周』(マイケル・アンダーソン監督/1956)。

これもロードムービーと呼ぶのだろうか。壮大にして豪華絢爛な世界一周絵巻。監督よりも製作者のマイケル・トッドの名とともに記憶されるべき映画。

トッドはDVDについていた一代記で、その名と仕事を始めて知ったのだけど、まあ大変な男である。この映画の主人公のフォッグと共通する大胆さと苦境への対応力。8歳でシアターの売り子のバイトを始め、20歳でセールスの会社を立ち上げ、21歳までに二度の成功と二度の失敗を経験。建設業で名を上げるが、20年代の大恐慌とともにショービジネスの世界に移って脚本を書き始める。それからブロードウエイに進出、1年間に4本のヒットを飛ばすほどの大プロデューサーになる。

そして彼の夢。「大統領になりたいと夢見る少年もいるが、私の夢はエリザベス・テーラーの夫になることだった」。その通りに、20歳年下の彼女と結婚。とにかく面白いので、特典映像もぜひ観てほしい。

この映画は、トッドの初めての製作映画だが、いったいどれだけお金がかかっているのというくらい、贅沢な作りになっている。しかもそのお金が、ちゃんと生きている。1872年に発表されたジュール・ベルヌの原作と、ほぼ設定も筋も同じ。「80日間で世界を一周できるか」という賭けのために、正体不明の英国紳士フォッグ氏と、雇われたばかりの召使いパスパトゥールが波瀾万丈乗り越えて世界を旅する。ただこれだけの映画なのだが、文句なく面白い。

出演は、フォッグ氏にデヴィッド・ニーヴン、パスパトゥールがカンティスフラス(メキシコ人。チャップリンが世界でもっとも偉大なコメディアンと呼んだ)、インドで救出して旅の一行に加わる姫にシャーリー・マクレーン、一行を追う刑事がロバート・ニュートン。

有名俳優がちょい役で登場する「カメオ出演」という呼称と手法も、この映画で生まれた。マイケル・トッドが口説きまくったのだという。その顔ぶれは、ジョー・E・ブラウン、マレーネ・ディートリッヒ、ロナルド・コールマン、マルティーヌ・キャロル、シャルル・ボワイエ、トレヴァー・ハワード、ノエル・カワード、フェルナンデル、グリニス・ジョンズ、フランク・シナトラ、ピーター・ローレ、ハーミオン・ジンゴールド、キャロル・ホワイト、ジョン・キャラダイン、アンディ・ディヴァイン…。

これだけの映画を作り、夢にみた妻をめとり、子供も生まれたばかりの1958年。マイケル・トッドは、飛行機事故で亡くなる。彼個人についてはもちろん、映画にとっても、まったくもったいない話だと思う。