イノセンス

『イノセンス』(押井守監督/2004)。

『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)の続編。こちらは、一作目の主人公・草薙素子が失踪しているものだから、相棒のバトーが主役となる。とはいえ、全編、「少佐(草薙)はああだった」「少佐はこんなだった」「少佐はえらかった」「少佐はつおかった」「少佐は」「少佐は」「もひとつおまけに少佐は」とくるので、もうえーかげんにせいよという感じ。

結局、その少佐がいつ出るかというのが、興味の半分を占めつつ物語は終盤に向かうのだが、終盤も何も、この映画は筋立てがよくわからない。ぼーっと観てるとわからなくなると思うし、ぼーっと観てなくてもわからなくなると思う。

第一に、台詞が難解である。やたらに孔子様やら聖書やらのお言葉の引用が入るし、それがまた聞き取りにくい。わざと聞き取りにくくするために、環境ノイズをかぶせているようなシーンすらある。そして、人物たちがやたらと多弁である。

「お前、最近口数が多くなったぞ」と、バトーがいうのだが、とにかく全員がうるさいくらいに観念論を述べる。それはつまり、ゴースト(意識)とか、記憶とか、個性とか、人形と生身の人間のちがいであるとか、生であるとか死であるとかいったものについての哲学的考察であって、その小難し度は前作をはるかに上回る。

前作で、世界的ヒットを飛ばしておきながら、作者はそれが気に入らなかったのだとしか思えない。ついてこれるならついてきてみろという感じで、客をどんどん突き放していく。

ラストシーン。バトーが救った少女に言う。

「犠牲者が出るとは思わなかったのか。人間じゃなくて、魂を持った人形たちが犠牲になるとは思わなかったのか」
「だって、お人形になりたくなかったんだもの!」

これがつまり、サゲなのであるが、このサゲはいくらなんでもひどかった。バトーがあんな台詞を言うわけがないし、サゲ自体もとってつけたような無理オチである。理はあるが面白くない。理に走りすぎて面白くないのは、このシーンだけではなかったけど。

総体にいうと、ぼくはこの映画は好きではないけど、その存在はうれしい。かつて、これほどの物量とお金を投入したSFアニメがニホンで作れるとは思いもしなかった。

この映画、初めてスピーカーマトリクスで観た。5.1chを2chで出力し、それを4本のマトリクス接続したスピーカーで再生する。AVアンプを通さないので、音質劣化はほぼ皆無。たしかにシーンによっては三次元的な音場が出現する。巨大なオルゴールが鳴るシーンは、とても美しかった。