肩の造影撮影
事故から2か月が経過したのだが、今でも右腕がほとんど動かせない。人に持ちあげてもらうと、さほど痛みもなく90度くらいまでは持ち上がるので、五十肩とか肩関節の炎症とかではなくて、腱板が切れているおそれがあった。
これを調べるのにMRIという便利なものがあるのだが、鎖骨から肩にかけてステンレスの釘が入っているので、MRIはできないらしい。なぜできないのか聞かなかったのだけど、MRI の磁気に金具が干渉してしまうとか、そういうことなんだろうと思う。
だもので、造影CTスキャンというものをやった。もちろん初めての経験で二度とやりたくないのだが、とりあえずどんなものか書いておく。
まず、シャツを片肌脱ぎにしてレントゲン台の上に仰向けに寝かされた。メンバーは医師2名、看護婦2名。この時点で、ちょっとたいそうな検査なのかもなと覚悟する。準備ができるのを待っていると看護婦が「不安じゃないですか」とか、そんなことを聞く。不安じゃなかったのだが、不安になってきた。
医師が来た。
「こないだ、肩に注射を射ったでしょ。あんな感じですから。ただ、ちょっと量が多いから張るような感じがします」という。どうも前説が丁寧であるところをみると、これは苦痛をともなうものであるにちがいない。心を痛みに備えさせるために、眉毛の力を抜いてリラックスする。
「ちくっとしますよ」
ちくっ。ぐりぐりぐりぐり。
「うああああああああ」のけぞる。
「入っていきませんね」
「なんとかがどうこうして、あれがへらほれだから」
「ちょっとこっちを」
「ぐりぐりぐりぐり」
「うああああああああ」看護婦さん、ぼくの手を握って
「はい。息をしましょう。ゆっくり呼吸して力を抜いて」
「液がいきませんね。ぐりぐりぐりぐり」
「うああああああああ」のけぞる。
「一度抜いてやりなおしますか」
「………」
「ちくっ。ぐりぐりぐりぐり」
「うあああああああああ」
「まだ痛いですか」
「いい痛くありません」看護婦さん、ぼくの手を握りしめる
「腱板、切れてないんじゃないかな」
「抜きますね」
「はあはあはあはあ」
「ちょっと持ち上げます」
「うぐうぐうぐうぐ」
「はい。ここで撮影して」
「いててててて」
「うん。肩胛骨、ついてくるから」
「腱板じゃないようですね」
「おや、これは石化ですかね」
「造影剤じゃないの」
「造影剤ですか。最初のがもれましたね」
「はい。終わりましたよ」
「はあはあはあはあ」
「明日くらいまで痛いですから、鎮痛剤飲んでくださいね」
「はあはあはあはあ」
10分か、15分か。すっかりくたびれてしまった。針が肩関節の中に入る痛みなのか、造影剤が入っていく痛みなのかしらないけど、関節内部の神経に直接さわるような、鋭くて気持ち悪い痛みだった。じっとこらえることができるものではなくて、反射的に体がのけぞるような痛み。看護婦さん、手を握るためにいてくれたのか。
「関節に沿って造影剤が入るはずなんですけど、半分くらい映っていません。つまり、そこから先、拘縮があって液が入っていかなかったんですね。ただ、腱板の部位からの液もれはありませんから腱板は切れていないと思います。固まったところを、引きはがすリハビリが必要ですね」
よかった。これで仕事ができる。病院を出て青空の下に立った時、涙がだーだー流れた。ひさしぶりに、うれしい日。痛かったけど。