本>ガダラの豚
『ガダラの豚』(中島らも 集英社文庫)。
なんとなく読みそびれていた。『今夜すべてのバーで』で、この人の小説家としての力量にたまげたものだけれど、この本では小説家以前に、もの書きとしての圧倒的な力とか、構成力、世界や人間への認識の深さのようなものにひったまげた。こんなもの書き、最近あまり見たことない。
この文庫版は1~3巻に分かれている。1巻は新興宗教にはまった妻を救出する話、2巻は一族まるごと呪術者というケニアの村を訪ねる、3巻はケニアで出会った化け物のような呪術者との対決。特に2巻の、のんびりとした旅行記めいた記述から、だんだんしのびよってくる不安と恐怖。その不気味な怖さ。文章ってすげえな、もの書きってすげえなとあきれかえるほどの力量。
その前に、『寝ずの番』も読む。こちらは、いつもの落語的らも噺。ネタも落語もので、笑福亭松鶴を思わせる師匠とその弟子たちのお通夜をめぐるお話でした。