TBSチャンネルの落語特選会から。圓朝作・鰍沢。

馬生の映像というのは初めて見た。ご存知志ん生の長男。志ん生の放埓も弟志ん朝の華もないけれど、渋みや粋で聴かせる芸。以前、「笠碁」を聴いてうなった。

この人は54歳で早死にをしてしまったが、あと10年も生きていれば、大名人にはならないにしても、さらに渋く円熟した達者な芸をみせてくれたにちがいない。いや、この鰍沢も結構なものだった。まだ50になるかどうかという頃だろうけれど、すっかり円熟している。

弟の志ん朝も早く亡くなってしまった。この二人、ほんとに惜しい。不摂生のかたまりみたいな親父だけ長生きをして、わりあい常識人らしき息子が若くしていくというのは。

さて、その鰍沢。明治の初めに史上最大の名人・圓朝が、三題噺として作ったものとされる。こんな大傑作を、20代前半くらいの若さで、しかも即興でこしらえた。「牡丹灯篭」も19歳くらいの作だったはずだ。三遊派にとっては避けて通れない噺なのだろうけど、圓生以外で聴いたことはなかった。圓生の鰍沢も、もちろん結構。

さて、馬生。ものすごい緊迫感。元花魁のお熊の凄み。三次元にも四次元にもなるような立体感とスピード感。にもかかわらず、どこかに空気穴を作っておくような軽み。これが芸ってもんだ。『ローレライ』、よく見ておきなさい。