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『バード』(クリント・イーストウッド監督/1988)。
さらに音楽もの。ディジー・ガレスピーとともにビ・バップを牽引したサックス奏者、チャーリー・パーカーの伝記映画なんだけど、何しろクスリとお酒で命を縮めて34歳で亡くなった人であるわけで、サクセス・ストーリーとかハッピー・エンドにはなりようもない。
最初はパーカーの映画ってことで軽い気持ちで観ていたら、なんのなんの、これは相当ちゃんとした映画でありました。ニホンのジャズファンは、昔から破滅型のプレーヤーを好む傾向があるとはよくいわれることで、その代表格の一人がパーカーだし、そのパーカーのビ・バップをピアニストとして展開したバド・パウエルでもあるんだけど、それは「命と引き換えにインプロビゼーションを生み出した、その刹那の輝き」みたいなものが、サクラの花とか武士道とかの感覚とマッチしてしまうのだろう。
これも相当ステレオタイプであり、死んだ者は悪口はいわれず、時にその死が業績の意味を高めることすらあるというのは、やはりローカルな価値観だろうと思うのだけど、ニホン人にはわかりやすい構図ではあるわけです。
ところが、イーストウッド監督はそこらにあんまり深入りしない。少なくとも「パーカーはこんなにクスリにおぼれちゃったけど、その代償としてあの素晴らしい演奏があったのだ。ゆえにパーカーの音楽は永遠の輝きを放つのだ」なんて描き方はなかった。ついに一度もクスリを使うシーンもない。
映画の中で流れる音楽は、パーカーやガレスピーらのオリジナル音源。とりあえずこれを聴いているだけで楽しめるし、話を無理に重たくしない監督のセンスもあって、映画としても上等なものに仕上がっております。