リーダーの資質
安倍首相のリーダーとしての資質を問う声が高まっている。
臨時国会代表質問の1時間前に、電撃的に辞意を表明。自らの政治資金団体にまつわる脱税疑惑もある中で、そのまま病院に逃れてしまったのだから無理もないのだが、今となっては死者をむち打つような、せんないことではないかと思う。もっともすでに死に体となった者を追いつめるのは、この国の常ではある。
歯止めのきかない支持率の低下、「政治とカネ」にまつわる相次ぐ閣僚の辞職、社保庁問題の中で、相も変わらず戦後レジームの脱却を唱え続けたあげくの参院選での大敗。そして自らのカネにまつわる疑惑。辞める理由は山ほどあったわけだが、総理というのは自分で辞めるといわないかぎり、誰も辞めさせることができない。だからむずかしい。森さんの時もそうだった。
あえていう。「政治とカネ」の問題が、野党やマスコミがいうほどに、大した問題であったのか。今、この国が直面している800兆の負債をどうするのか。また、40年後には人口が4分の1減ることが確実視されている。その時、当然、国力も4分の3になるわけだが、国民一人ひとりの暮らしぶりはどうなるのか。向上するとは思えない、おそらく確実に低下する。その問題にどう対処するのか。そして目下の課題である官僚組織のリストラをどうするのか。
政治家が数十万円の領収書をごまかした。数百万円がどこかへ行った。事務所費が数千万円、わけがわからなくなっている。それがどうしたとは言わないけれど、そんなことはとっくの昔から常態化していたことだ。それをマスコミが知らなかったわけはない。しかし、それが政局になるとなれば、野党とともにあおりにあおる。そして国政選挙の争点?にすらなってしまう。
政治とカネの問題は、少なくとも安倍首相の責任ではない。さらに、社保庁の問題もとっくの昔から起こっていたことで、安倍首相の責任ではない。この身に覚えのない二つの事柄にがんじがらめになって、安倍首相は追い込まれ、弱さをさらけだすことになった。
首相としての資質を考える時、安倍首相の最大の弱点は、直接責任のない事柄が自分の時代に露呈し、もっていきようのない国民の怒りを一身に背負わなくてはならなかった、彼自身の運のなさにつきると思う。一国のリーダーが運に恵まれなかったというのは、たしかに職を去るには十分すぎる理由だろう。
この時代、日本は800兆円の負債を抱え、戦後復興と高度成長を通して官僚組織が強大になったことも加わって財政が硬直化し、その解決として規制緩和と財政縮小を柱とする改革をめざしたが、反面、中央と地方の格差、国民間の経済格差は拡大した。また、高齢化と人口減少の進行が国力を疲弊させる中で、新たな国家デザインの構築が急がれていたが、国民とマスコミは政治家に政策よりも潔癖さを求め、当時、政治資金規正法の対象外となっていた事務所費の扱いをめぐる不正、および記帳ミス(その額は数万円というものもあった)で辞任する閣僚が相次ぎ、2007年参院選挙ではこれが理由となって与党大敗を招いた。これら一連の動きは、自らの権益を守るために行った、一部の官僚とマスコミによる演出も影響しているという指摘もある。また、未熟な二大政党制の中で、政策の選択肢が十分に提示されないままに、政局がムードに流れていたことも、この時代の政治の停滞の一因と考えられる。
と、2050年代のwikipediaには記述されているかもしれない。
今、この国はそれどころではない。人口減少は、ある時点から他国への人口流出も加わって、予測以上の速度で進む可能性もある。他人の財布の中身を詮索するひまがあれば、国家の財布のことを真剣に考えるべきだと思う。
現在、そちらの方に目を向けずに、身体検査と称する魔女狩りのようなことが横行している状況もまた、安倍首相の不運に由来するものであるとすれば、この空白は国にとってこれほどの不運はないと思う。

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