酒とデパスの日々
例によって締切り前に半発狂状態になる。原稿を書き始めると完全発狂であって、罪もない猫や子供に意味もなく当らないともかぎらない。そんな自分がかぎりなく情けないのだが、そこまで追い込まないと働き出さない馬鹿頭なので、もう仕方ないのだ。
しかも今回は、締切り4日前に風邪をひくという、今までにないテイタラクであった。サラリーマン時代に、プロは正月と盆に風邪をひくものだと教え込まれ、きっちりそれを守ってきたのだが、もはやワタシも焼きが回ったとしか思えない。
それでも、その馬鹿風邪には自分なりに反撃を試みた。総合ビタミン剤とユンケルとビイレバーキングと蒜参精と貴命とプラセンタを「一度に」むさぼり食い、ついでに葛根湯エキスを飲んで、パソコンの上に鎮座しているヒョウタンツギにも祈りを捧げた。さすがの馬鹿風邪も、ややたじろぎ、熱は37.2度のままで止っていた。平熱が35度台だから、これでも楽ではない。
仕事をしよう。仕事をしなくちゃいけない。仕事に遅れてはえらいことになる。去年の今頃も、怪我で遅れてえらいことになったではないか。今度やったらまずい。非常にまずいことになる。大変だ大変だと思うばかりで、原稿に向かえない状態が続いた。
友だちの女の子と、かような状態についての携帯メールを何度か交換したのだが、やがて返事もこなくなった。馬鹿が発狂しているのだから、当たり前だ。それでも、テレビで宮崎駿の密着ドキュメントを見ていたら、彼も構想段階では同じ状態に陥ることを知って、少し楽にはなった。向こうはこちらよりもっと不機嫌になる。いや、ぼくだって今の状態で密着取材なんかやられて「今のお気持ちは」なんて聞かれたら、即座にトビゲリくらいかます。納豆も投げつける。
とにかく寝てから考えようということで、ベッドに入るのだが、眠れない。二日もベッドで起きたまま朝を迎えるという最悪の状態になった時に、オクサンからデパスをもらう。以前、何かで処方してもらって当人は使っていないので、まっさらの0.5mg錠剤が20錠ほどある。
飲んでみた。さすがに生まれて初めて飲むクスリは効く。10分ほどで、ここしばらくない穏やかな心持ちが訪れて、すやすやと寝入ってしまった。
それから体調も回復し、ついでに風邪も抜けて、めでたくこうやって書いているわけである。それはいいのだが、昨夜は原稿を書いていて4時になった。寝ようと思ったのだが、たった今まで仕事をしていてすぐに寝られるわけもない。
デパスを探したのだが、まてよ、クスリはクスリであるからあまり頼るのもよくない。軽くお酒にしようと、スミノフアイスを1本だけ飲んだ。アルコール分8%未満、275mlというものなのだが、しばらく飲んでなかったのと、疲労と寝不足と、過度の緊張状態にあったものだから、これで急性アル中になってしまった。
高校生の時以来の苦しさで、起き上がることも寝ることもできない。背中を壁にもたせかけて、はあはあいっているしかなかった。それが2時間。ひどい目にあった。やはり今夜は、デパスを飲んで寝ることにしよう。起きたら、また原稿書きなのだ。

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