2007年1月18日

落語四席

昨日から今日にかけて、録画しておいた落語を四席聞いた。TVだから観たといってもいいけど、やっぱり落語は「聞いた」でしょうな。

まずは「文珍・南光のわがまま演芸会」(NHK)より、桂文珍の『風来坊』。これは、かの柳家金語楼先生作『アドバルーン』の改作という由。いや、桂文珍。軽い噺で若手のヒザ代りを務めたわけだけど、愛嬌もあり描写もよく、めりはりも効いて、落語のお手本のような噺でした。

この人を見るたびに、小染が生きていたらなあと思う。30そこそこの若手時代に聞いた『うどんや』なぞは絶品だったけどなあ。こっちも10代だったが。

続いて、文珍・南光がプッシュする若手真打ち柳家三三(さんざ)のトリで、『権助提灯』。去年、真打ちになったばかりのぴかぴかの若手で、どんなもんだろうと思っていたら、この人はちょっとしたもんです。いや、もしかして未来の大真打ちを、目の当たりにしたのかもしれないと思わせるものがありました。

顔立ちは、というか高座に出てきた時の雰囲気は、昔、柳沢慎吾が出てきた時のような微妙な違和感がたちこめる感じ。要するに額が狭くて(と思ったが案外広い)、それが妙に切れ込んでいて、目が小さくて(と思ったが案外大きい)背ばかりひょろりとしていて…。それが妙なフラにもなっていて、語りは本格なんだけど東京の若手にありがちな、こじんまりとしたクールな感じがまるでない。

『権助提灯』は、旦那、奥さん、妾、飯炊きの権助と、この四人の登場人物の会話だけで、ほぼ成り立っている噺なのだけれど、その四人の描き方が、見事に直球ストライクでした。「権助、提灯に火を入れな」という旦那の台詞のトーンだけで、この人の落語愛のようなものが伝わるし、余計な入れごとやくすぐりを入れない、若手として理想的な構成にセンスを感じました。リズム感もいいし、言葉の選び方もいい。

数年前、たい平と喬太郎がそろって真打ちになった時にも、けっこう衝撃だったけれど、この人の場合、もって生まれたものだけでいえば、この二人より根深いものがありそうに思うわけです。それを天性といっていいのかどうかわからないけれど、この先、芸に磨きがかかればそういうことになるんでしょう。野球でいえば、生まれつき球を遠くに飛ばせる、フォームの大きさのようなものを持っているようです。

続いて、その喬太郎のお師匠さん、柳家さん喬の『八五郎出世』(日本の話芸・NHK)。うーん、この人、最近メディアの露出が多くて、見る機会もけっこうあるんだけど、この『八五郎出世』は、なんか噺の運びがもたもたしてて、ついていくのがつらくなった。どこか愛嬌はあって、この八五郎も、そういう意味ではいいところもあるんだけど、やっぱ、噺の総体としてはもうひとつ。決して悪くはないんだけど、繰り返し聞きたいという気にさせてくれない。落語的な快感が薄いというか。

原題は『妾馬』。とくると、あの先代三笑亭可楽のリズムがどうしても頭にあるので、スジの運びがもたつくと、こちらがいらいらしてしまう。さらっと流すところはさらっと流して、とんとんとん、とやってほしいものであります。江戸っ子の噺なんだからさ。万人にわかりやすく、なんて思ってるのかもしれないけど、それでリズムが壊れるくらいなら、わかんないやつはどんどん置いていけばいいのだ。

最後は、ごめんなさい。三遊亭圓生『品川心中』(落語特選会・TBSチャンネル)。もう、この人が出てきてしまっては、すべてを忘れてぼーっとなるしかありません。ほんと、マクラが始まったとたんに意識が遠くなって、江戸の世界をただようわけであります。

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